今回は自己分析の際の「自分の強みの見つ方」について書いていきたいと思います。
強みとは「人より簡単にできること」です。似た言葉として才能とか得意とかがありますね。ビジネスで「強み」ということが注目されるようになったのはごく最近のことなので、ピンと来ない方も多いと思いますが、別に特別なことではありません。
例えばスポーツの世界で勝とうと思ったら、他人よりも優れたところを活かして勝負しようとします。野球でいえば、投げるのがうまければ投手になり、長打が打てる、足が速いといったことがあれば、それを活かすポジションに付きます。
ビジネスで強みを活かすという発想も、スポーツと全く同じものです。スポーツと同じ様に、仕事でも人より優れていること、楽に結果が出せることを活かせるポジションでやっていくほうがよいという考え方です。
ただでさえ企業の生き残り競争とか言われている時代です。少しでも有利に経営をしていこうというのは当然で、「強み」がいいなら使えということになりますよね。
強みを活かしてビジネスを行っていくメリットは統計的にも証明されており、強みを見つけるため社員に支援をしている欧米の大企業は数多く存在しています。
その一つの例として、プルデンシャル・セキュリティーズという米国の証券会社を紹介しましょう。ここでは4,500人の営業担当者が働いています。
かつては全く同じ営業方法を全員がやるよう指示されていたそうですが、ある時から担当者が自分の強みを発揮できるような仕組みにしたそうです。
その結果、既存顧客に対するフォロー的な営業に特化する人、新規開拓の飛び込み営業に特化する人などが登場し、それぞれに目覚ましい成果が出てくるようになったそうです。
また証券会社には商品先物のようなハイリスク商品から、定期預金的なローリスク商品までいろいろありますが、その担当さえも自分の強みを活かせるものを扱わせるようにしたそうです。(注1)
普通に考えるとローリスク商品は利益が少ないように思えますが、そうした商品でコツコツと営業に励み、凄い成果を上げる担当者も出てきたそうです。
強みを活かすことの大切さを示しているのではないでしょうか。
大企業でさえ、このような状況です。小規模の企業にとっては、個人の強みがより経営に反映されやすいわけですから、一層重視すべきであることはいうまでもありません。
またさまざまなメディアで仕事のプロフェッショナル達が彼らの強みを活かして活躍してる姿などを見ると、やはり憧れてしまいます。
以上のようなことで、起業家も考えます。よし自分も強みで勝負しようと。
ところが、ここでつまずく方が多いようです。
ところでさてビジネスの世界で通用する自分の強みとは何だろうか?
その強みを活かすだけで圧倒的に他者を引き離せるような強みを自分は持っているのだろうか?
スポーツならわりと簡単に強みがわかるのですが、ビジネスでの強みって見つけるのは難しいのです。
会社の強みなら「技術力」とか「新商品の発想力」とか容易に出てきます。ところが、自分個人の強みを知るって、簡単ではないのです。まず、誰にも習ったことはないし、初めてだし、さらに自分自身を客観的に見て分析すること自体が難しいからです。
参考になる動画を一本紹介しておきますね。
こちらのページでは、そうした方でも、自分の武器、代名詞ともなるような強みを見つけられる方法を説明してまいります。さあ、始めましょう。
強みがわからないのは当たり前
強みの大切さはわかってるけど、自分の強みに関しては、これだ!と自信を持って言えるものが見つからず悩んでいる人は多いようです。
就活や職場の研修で、強みを見つけるワークとかをやらされる機会はあると思いますが、結局その場限り。
強みを見つけても「自分にしっくり来ない」「ありきたりでイマイチ」「◯◯力って抽象的すぎて意味不明」ということでそのまま放っておいている人がほとんどでしょう。
でも、それって実はすごくもったいないことなんです。宝石に例えれば、磨けば高く売れる原石を捨てているようなものなのです。下記は巷でわりとよく耳にする強みの例です。
自分の強みの例
- 「親切で気配りができるね」と人からよく褒められる
- 有名な私大出身、TOIECも高得点
- 営業成績が連続1位になった
- 適性検査で「統率力」が強みだと判定された
- おばちゃん達には、なぜかいつも親切にされる
- 何を無くしても100%戻ってくる
- どんなに危ないことをしても命に別状ない
- ワインについての知識とコレクションは誰にも負けない
いかがでしょうか。まあよく聞くような内容ですね。実はこうした、一見大したことのなさそうな強みの候補でも、セオリーに従って磨けば「武器と成る強み」に変身させられるのです。
それを知らないから、みな強みの原石をそのままにして、自分探しをしてしまうのだと思います。
でももう大丈夫です。これからお知らせするちょっとの工夫で「武器となるレベルの強み」にブラッシュアップできるんです。これから説明しますので、ぜひ実行してみてください。
武器となる強みとは
おまたせしました。では武器といえる強みとなる条件を説明しましょう。次の2点がそろっていることが条件です。
成果が明確にわかること
強みとは、「他人より簡単に成果が出せること」です。ですのでどんな成果が出せるかが,あやふやでわかりにくいものでは全く意味がありません。
よく、わかりやすく文章を書くには5W1H(誰が,いつ,どこで,何(誰)を,どうする,なぜ)が大切だといいますが、強みのもたらす成果についても同様に表現すべきです。長くなってもかまいません。
「忍耐力」「変革力」が強みだと言われても、それなりの潜在能力は示唆してることはわかりますが、具体的な成果に繋がるイメージが沸かないので、結局使い物にならないのです。
先ほど掲げた強みと思われる4つのリストも、同じく明確にイメージできないので、そのままでは使えません。
自分の強みの例文 ~ブラッシュアップのコツ~
では理解を深めていただくため、以上の知識を元に、きちんとした強みの表現にブラッシュアップしてみましょう。
(1)親切で気配りができる
[ブラッシュアップ]⇒「成人の接客において、全くの自然体で完璧な気配りを行える」
(2)有名な私大出身、TOIECも高得点
[ブラッシュアップ]⇒「ビジネスで通用する英語力を持ち、ある程度の経験知識があるテーマであれば外国人を相手に十分に納得できるレベルの商談、プレゼンが行える」
(3)営業成績が連続1位になった
[ブラッシュアップ]⇒「法人向けのルートセールスであれば、コンサルティング的な営業スタイルで良好な信頼される関係性を保つことができる」
(4)「統率力」が強みだと判定された
[ブラッシュアップ]⇒「数人から20名くらいの規模であれば、メンバーの性別・年齢構成に関係なく、共感に基づいたサーバント型のリーダーシップで目標へ向かってまとめていくことができる」
(5)おばちゃん達には、なぜかいつも親切にされる
[ブラッシュアップ]⇒「35歳以上の女性からは、関心と好意を持たれ愛情を得やすい」
(6)何を無くしても100%戻ってくる
[ブラッシュアップ]⇒「身近にある自分にとって大切なものは見えなくなっても無くすことはない」
(7)どんなに危ない目にあっても命に別状ない
[ブラッシュアップ]⇒「本質的な危険は本能的に避けられ、かつ防御され心身の安全は保たれる」
(8)ワインのコレクションと知識は誰にも負けない
[ブラッシュアップ]⇒「興味関心を持った対象については、圧倒的な知識の吸収と秩序立った整理が行える」
あくまでもビジネスなので、まずは「成果」ありきです。強みのもたらす結果が文章に全て落とし込まれているか、その文章を聞いただけでもイメージが湧くかが大事なのです。
文章自体はかっこよくまとめる必要はありません。
本人が活き活きと取り組めることが強み
これは取り組む姿勢についての条件です。仕事をすすめるプロセスにおいて、意義や充実感を持って取り組んでいるか、好きでやっているかということです。
?の成果が出ることは大前提なのですが、それに加えてポジティブな感情を持てる強みであることが必要なのです。なぜでしょう?
強みの種類によっては、好きでもなく充実感はないが成果を出せることがあります。学校とかで、努力せずにスポーツや勉強ができてしまう人がいたと思います。意外に当人たちはつまらなそうで、そのことに喜びや達成感は感じていなかったように思いませんか。
まあ自分だけの趣味の世界ならそんな程度でもOKですが、仕事となると難しいです。強力な強みであり続けることは無理でしょう。なぜなら、いくら「強み」でもそれを磨き続ける継続的な努力が必要だからです。さすがに、好きだとか、やりがいを感じられるといったことでないと続かないでしょう。
またその成果を受け取るのは人間です。しょうがなく金を稼ぐため取り組んでいる人よりも、本人なりの喜びや情熱を持って取り組んでいる人を応援したくなるのが人情でしょう。以上が2つ目の条件を掲げた理由です。
強みを見つけてみよう。
いかがでしたでしょうか。武器として使えるレベルの強みは、特別なものでは無いということがおわかりいただけたかと思います。その中味が明確であり、意欲を持って取り組めるのであればよいのです。
強み自体に優劣はありません。だから他人の強みを羨ましがることはありません。強みは誰でにもありますから、ぜひあなたも見つけてみてください。
自分には無いと思われる方もいらっしゃると思いますが、たぶん見つけ方を勘違いしているだけだと思います。実際、私が知る限り障がいを持った方も多くの強みを見つけられています。
人間の可能性、ご自身の可能性をまずは信じ、行動してみることを心からおすすめします。
それでは次に、具体的な強みの見つけ方を説明していきます。きちんと決められたやり方にそって考えていけば、誰でも2つの条件を満たした強みを見つけられます。ではさっそく説明をはじめましょう。
強みの見つけるための3ステップ
強みを見つけるには、3つのステップがあります。
1番めのステップは、自己分析です。自分の強みを、所定のシートに過去を振り返りながら書き出します。
2番めのステップは、他己分析です。自分の強みは何かということを周りの人に質問します。
3番めのステップは、自己分析と他己分析の結果からの強みの抽出、そして文章化です。共通性のあるものを束ねてご自身の強みを明確にし、言語化します。
それでは順番に従って作業に取り組んでみてください。
(自己分析をやってから他己分析に進むほうが効率的なので)
第1ステップ 自己分析
自分の強みと思われるものをどんどん書き出していきます。ノートに思いつくまま書き出していくという方法もありますが、効率が悪いので私はお勧めしません。
推奨するのは、これまでの人生をいくつかに区切った上で、その区切りごとに、強みが含まれていそうな事実を見つけてメモしていくという方法です。ただ漠然と何も無しに振り返るよりも圧倒的に精密で豊かな情報が得られます。
ここでは、そのためのツールとしてごく簡単な自分史を用意して強みを見つけてみたいと思います。方法は以下のとおりです。
シートの準備
書き込むシートのテンプレートを用意しました。こちらをダウンロードしてください。MS Wordのファイルです。
MS Word形式テンプレート(拡張子DOC)
ダウンロードしたら、印刷し各年代ごとに、当時を象徴するキーワードを、年代欄に書き込んでください。印象深い出来事、イベント、人の名前などです。
当時の記憶を思い出しやすくするためのフックとなります。1ページ目が記入例となっていますので参考にしてください。
なお時間があれば自分史自体を詳細に書くほど、強みが発見しやすくなります。「自分史」で検索すると、書き方のヒント、無料の雛形などが見つかると思います。
?強みを見つける問いかけをヒントに~強みを見つけるための質問集~
次に強みの原石を見つけるため、各年代ごとに10個の質問を自分自身に問いかけてみてください。強みを現していそうな事柄を思い出したら、それをシートの中央の列に書いていってください。
強みを見つけるための質問
- 人に褒められたこと。自分では当たり前だと思っていたのに驚かれたこと。あなたらしいと指摘された点。「凄いね」と言われたこと。
- 褒められた業績,表彰されたこと
- 夢中になったもの(幼児期の遊びは絶対に書く)
- 好きだったこと、ワクワクしたこと
- 得意だったこと、他人より優れていたこと(勉強、仕事、その他)
- 言われなくても時間があると、ついやってしまっていたこと
- 遊び、仕事、趣味、部活等でこだわっていたこと
- 遊び、仕事、趣味、部活等で、状況が苦しくても、切り抜けられた成功や勝ちのパターン
- 他人と何かに取り組んだ時、自分がどんな立場や役割のときに結果が出やすかったか
- 時間をかけて取り組んだこと
- 何で他人はこれができないのだろうと思うこと
※自己について書き出したり分析したりすることが、苦手だったり苦痛だったりする方もいます。その場合は無理はしないでください。
第2ステップ 強みの他己分析
方法
他己分析とは、自分の強みを人に尋ねて知る方法です。身近な人、可能ならば顧客にきいてみましょう。
- 身近な人には、ストレートに「自分の強みは何だと思う?」と聞いてみてください。
- 顧客や取引先には「自分らしさが仕事で発揮されているのはどんな時?」と聞くのもいいです。
- それから自己分析をやって、あなたなりに疑問が出たと思います。「ひょっとしてこれって強みだろうか?」と思ったことがあったら、それについて確認してみてください。
あとメールで聞くのもありです。いろいろと試してみてください。
記録するときは、相手の言った言葉通りに書き留めたほうがいいです。自分の言葉に変えてしまうと、貴重な生の情報が抜け落ちてしまうこともあるからです。
聞く対象者と人数
一人ではなく複数の人に聞いてみてください。理想は3名以上です。育った環境や経験が違う複数の他人から似たような傾向のことを言われたら、それは多くの人が共感する内容である可能性が高いからです。
家族と家族以外では、強みについての意見が異なったり、矛盾が出たりする場合があります。
家族以外にはとても配慮ができ親切なのに、家族にはぶっきらぼうという方もいらっしゃいます。
それはそのまま受け取ってください。両方の評価が正解です。家を出ると外向きの顔で活動することが原因です。ビジネスで使える強みを探すなら家族以外に発揮している強みを優先して活かすといいです。
第3ステップ 強みの抽出と文章化
自己分析そして他己分析で書き出した文書から、似たようなことを表している文言を探し、その共通点を見つけて言葉にしてみてください。その言葉を最後に一つの文章とします。実際の例を掲げますので参考にしてください。
強みを感じたことがらから似たものを探す
(似たもの10個を並べたと仮定)
- レゴとプラレールで飽きずに街作り
- 鉄道路線図を飽きずに写す
- 木工コンクール入賞
- ロックバンドのメンバーを1週間で集め結成
- 友人の引越しを手伝うたびに「プロの引越し屋」になることを薦められる
- 職場のパソコンのトラブル処理は全て自分が対応させられた
- イベントの撤収と倉庫大片付けは上司から大いに感謝されてた
- 難解な科学機器の商品説明がわかりやすいと顧客に好評
- 妻から収納だけはうまいと褒められる
- 部下を適材適所に配置し後日彼らに感謝された
↓
共通点を言葉にしていく
情報 モノ 流れ 整理 片付け
整頓 収納 目的 再配置 表現
↓
文章化
人・モノ・情報を整理し、目的に添って組立てや再配置ができる強み
時間をかければ、どんどん出てきます。日常生活でも意識しているとふと「これも強みかな」と気づくことがあります。追記していきましょう。
また強みは再現できることが大切です。気分次第だとか、相手次第とか、運任せとかでは武器レベルの強みとはいえません。もちろん100%は望まないでいいですが、80%は再現できる能力でないと厳しいです。強みだと思うのに再現性が低いと思ったら、それはシチュエーションや対象者などが絞りきれていないのだと思います。再度確認してみてください。
【参考:経験談】
私には、経営の流れをみて、うまくいっていない原因を的確に見つけられるといった強みがあります。ですので他人には起業面のアドバイスをして感謝されることが多いのですが、自分の会社、自分の携わった事業に関しては、そうした勘が働かず失敗ばかりでした。
また知人の会社とかに助言をして、凄い成功をもたらしたりすると大抵、その人から経営に参加してほしいと言われます(3回ありました)。でも、それにのると、とたんにダメな提案しかできなくなるのです。しばらくは納得がいきませんでしたが、後日専門家に相談し、わかったのです。私のこの強みには対象の制約があったのです。「自身の利害」に直接絡むと、強みが働かなくなることを。残念! 聞くところによると占い師さんもそうらしいですが・・・。
強みの成果や対象といったものを明確にして文章に仕上げましょう。かっこよくなくて結構です。逆に、中途半端にキャッチコピー化して正確さが損なわれる方が怖いです。
まずは、自分のたくさんの「強み」を見つけて、内容を明確にしてください。そしてその中から意欲をもって取り組める強みを見つけてください。3つ以上見つかれば上出来です。
見つけることで、きっと大きな前進ができます。見つけて文章にしたら、手帳などに書いておき、ときどき眺めるとよいと思います。強みは自覚することで、自己肯定感があがり、自信UPにもつながります。
また意識すると自然と積極的にその強みを使おうとしますから、自動的に磨かれ成果もより出やすくなります。
まとめ
こちらのページでは、まず武器になるレベルの強みは2つの条件を備えていることを説明しました。「成果が明確にわかること」と「本人が活き活きと取り組めること」です。
次にそうした強みを見つけるための方法として次の3つのステップを提示しました。
第1ステップ 自己分析
第2ステップ 他己分析
第3ステップ 強みの抽出と文章化
また再現性の重要さも補足させていただきました。
以上のことを試してもらえれば、強力な強みが見つかると思います。ぜひチャレンジしてみてください!
発見した強みを活かす方法など強みについては、引き続き書いていきますのでよろしくお願いします。どうもお疲れ様でした。
(注1)ドナルド・O・クリフトン他 『強みを活かせ!』 日本経済新聞社 2001年 p.39