地域ブランドの意味|地域ブランド戦略の紹介
地域ブランドの概要を説明します。また地域ブランドの戦略については企業とは異なる4つの要素「地域の理念」「地域の範囲」「主体」「ブランドを冠する対象」を考慮しつつ代表的な2つの地域ブランド戦略を紹介します。
地域ブランドとは?
地域ブランドとは、企業において使われている「ブランド」の概念を「地域」を対象に転用したものです。
地域に関しての様々な事柄の中から、経済的側面から意味があり、かつ他の地域と比べて特徴のあるものについて連想されるイメージをビジネスや地域の活性化に利用するものです。
地域名が単独で使われる場合と、地域名と商品・サービスの名称を合わせて使われる場合があります。ちなみに「地名+商品名」は商標として登録ができるようになりました。
正式には地域団体商標といいます。2006年4月には商標法が改正・施行され農協や漁協などの組合が登録をできるようになりました。400件以上が認められています
地域ブランドを設定し振興する目的は、いわゆる「地域活性化」です。地域ブランドの知名度やロイヤリティのアップにより「観光客の増加」や「産業競争力の強化」「特産物の売上拡大」を起こし、結果として地域振興を行うことです。具体的な地域ブランドの例としては以下のようなものがあります。
・地名地形:知床(しれとこ)
・生鮮品:関(せき)さば、夕張メロン、宮崎牛、加賀野菜
・加工食品:渋川のこんにゃく、沖縄そば、十勝ワイン
・温泉地やリゾート地:道後(どうご)温泉
・工芸品など:関の刃物、今治のタオル、桐生織
・郷土料理・ご当地グルメ:北海道スープカレー
・観光地:富良野、京都
・イベント:ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
・キャラクター:くまもん
・その他:文化財や音楽なども含まれます。
参考事例はこちら
なお、地域ブランドにすれば売れるということではありません。地域の特性を生かしながら、消費者ニーズに応じたもの、食品であれば、特色ある新品種の育成や加工法味付けなどは必須です。今後の発展が期待されています。
地域ブランド特有の検討事項
地域のブランドを考える場合、企業の場合と異なり、次の項目も加えて検討する必要があります。「地域の理念」「地域の範囲」「主体」「ブランドを冠する対象」の4つです。
地域の理念
企業の場合は企業理念、ミッション、ビジョンというものが既にありますが、地域ブランドの立ち上げ時は存在しません。地域の住民とステークホルダーの方たちが納得できる理念を用意する必要があります。なぜやるのか、将来地域をどうしたいのか、といった事柄です。それらが決まって初めてブランドのコンセプトが検討できるようになります。
地域ブランドの「地域の範囲」
「対象地域」とは、どこまでの地域を対象とするかです。市町村レベルなのか、県なのか、もしくは複数の自治体にまたがるのかといったことの検討です。
地域ブランドの「主体」
主体とは担い手です。自治体なのか、農協や漁協なのか、観光協会なのか第3セクターやNPOなのかなどといったことです。
地域ブランドを「冠する対象」
「ブランドを冠する対象」は何を対象とするのかを決めなければなりません。生鮮食品、工芸品などは作られた産地の範囲、消費の品質、命名基準などを決めなければなりません。
企業においても多くの事業や商品をもつ場合は大変なのですが、地域ブランドも戦略を考える場合は同じように検討事項は多くなるわけです。
地域ブランド戦略
次は地域ブランドの戦略をあげましょう。「コンテクスト・ブランディング戦略」と「エピソードブランディング戦略」です。
コンテクスト・ブランディング戦略
地域にはたいてい、地域を特徴づける複数のコンテンツがあります。コンテンツとは景勝地、歴史的建造物、農産品、工芸品、祭、イベントなどです。
そうしたコンテンツを個々に羅列してPRするのではなく、全てを総合し一つの文脈(コンテクスト)で語れる形にします。その地域を取り巻く背景、歴史、民俗を踏まえたうえで、その地域のすばらしさを主張するという戦略です。
例としては大分県豊後高田市が行い成功した「千年ロマン」という取組みがあります。
2000年までは、中心の市街地がシャッター街化した錆びれた場所となっていたのですが、2001年に9軒の商店が中心となって始めた「昭和の町」(昭和時代の建物・看板・道具類が見られる)造りが成功し年間30万人が訪れる町となったそうです。
そこからさらに地域にあったより古いコンテンツ(奈良時代からの建造物、棚田など)を掘り起こし「千年ロマン」という統一されたコンテクストを提供するまでになっています。
ネットでも「千年ロマン百貨店」http://shop.showanomachi.com/という特産品のネットショップがありますのでぜひご覧ください。
エピソードブランディング戦略
地域を訪れた観光客などがその地域で体験したことをエピソードとして記憶してもらうということにフォーカスした戦略です。いわばストーリーテリング(物語)をうまく取り入れ、拡散を狙ったものといえます。コンテクスト・ブランディング戦略との併用も可能です。
他にも企業での手法が使える部分は多々あります。特産品を店頭で販売する場合などは、ほぼ企業が行っているのと同じやり方で対処が可能です。
(出典:三浦俊彦(2013)「コンテクスト・ブランディングとエピソードブランディング」地域デザイン学会編『地域ブランドと地域の価値創造』p.23 芙蓉書房出版)
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