企業のブランド戦略(ブランディング戦略)|定石の9パターンの戦略を紹介
企業のブランド戦略について解説しています。企業のブランド戦略のうち定石として使える代表的な9つのパターンを紹介します。基本戦略が4つ、そしてブランド拡張戦略が1つ、さらにブランドの冠(かん)し方の戦略が4つ、合計9つです。
基本ブランド戦略(基本ブラディング戦略)
ブランドの基本戦略とは、「ブランドの対象市場」と「ブランド名」の2軸によって戦略を整理したものです。
「ブランドの対象市場」:既存と新規の二つに区分し、「ブランド名」:既存と新規の二つに区分してマトリックスにします。イメージは図の通りです。それでは順番に説明していきます。
(参考記事)ブランド戦略の意味とは?|ディズニーランドとUSJのブランド戦略の違いから考える
ブランド強化戦略
既存の市場で既に使用しているブランドを、より強くしていくための戦略です。成果としては従来よりも一層、購買頻度を高めることが目標となります。市場が成熟している場合には、他社ブランドからの乗換を促すことも必要です。
消費者を飽きさせずに興味関心を自社ブランドに向け続けさせることが目標となります。消費者は長期間、全く同じ商品やサービスを提供すると他のものを試したくなるからです。
戦略の実施方法としては、少しずつ味や香り、パッケージのデザインを変えたりすことが有効です。このあたりのさじ加減は難しく、どの程度変えていくかが、この戦略の肝となります。
ブランド変更戦略
既存の市場で既に使用しているブランドの名称を換えてしまう戦略です。
・既存のブランドが全く振るわない
・もしくは危機(企業の不祥事や事故)に見舞われた
・陳腐化した
・ブランドが乱立した状態を整理統合するため
以上のような場合にブランド自体を別のものに替えます。商品やサービス自体は変更しません。
例としては、以下のようなものが有名ですね。
「カネボウ」→「クラシエ」
「ライブドア証券」→「かざか証券」
「ナショナル」「松下電器」→「Panasonic」
「アンダーセン・コンサルティング」→「アクセンチュア」
「WEGA」→「BRAVIA」(SONYのテレビ)
ブランド・リポジショニング戦略
既存の商品やサービスのポジショニングのみを変えます。ポジショニングとは「顧客の頭のなかでその商品・サービスをどのような位置づけて認識してもらうのか」ということです。
有名な例としては、資生堂が展開するボディケア製品「シーブリーズ」があります。当初は、20~30代男性が海で使用する商品として販売しましたが、女子高生に日常で使ってもらうような商品としてPRする形に変えたのです。
その結果、売上が低迷したいた時の8倍にもなったそうです。
(出典:PRESIDENT Online┃事例から学ぶマーケティング概論(第3回))
ブランド開発戦略
新規の市場に、新しいブランドを創って参入するのがブランド開発戦略です。
よく例としてあげられるのが花王のヘルシア緑茶です。花王はもともと化粧品や洗剤などをメインにしていました。新規に飲料市場に参入するにあたり花王というブランド名称は使わずに「ヘルシア緑茶」という新規ブランドで行ったのです。
これは飲料という市場に「花王」のブランドイメージがそぐわなかったためと思われます。狙いはあたり、この種の飲料としては定番的な位置を確保しています。
ブランド拡張戦略
ブランド拡張戦略とは、その名の通り、そのブランド名を付ける商品やサービスの分野を新規市場に拡大していくことです。
元となるブランドから連想されるイメージと、新しい市場のイメージや雰囲気の間に違和感がなければ、消費者に容易に受けれられやすく、企業にとって大変有利な戦略となります。
なお、同じ既存市場で商品のバリエーションを増やす戦略は、これにあてはまりません。例えばコカ・コーラ社の「ファンタ」が「オレンジ」「グレープ」「レモン+C」「すいか」といった製品群を増やしたようなことは「ブランド拡張」とはいいません。「製品群ブランド」を創った、充実させたというのが正しいでしょう。
ではブランド拡張戦略の成功例をあげます。
【成功例】
《ホンダ》 オートバイ → 自動車、マリンエンジン、除雪機、耕運機
《無印良品》 一部の雑貨 → 衣料、食品、住宅、家電
《毎日骨太》 牛乳 → ヨーグルト・チーズ
ブランド採用戦略(冠し方の戦略)
ブランド名を商品やサービスに付けることをブランドを冠するといいます。
企業のなかで扱う商品が複数ある場合、それらにどのようにブランド名を冠するのかはたいへん重要です。この関冠し方にも戦略が存在します。
マスター・ブランド戦略(=ダブル・ブランド戦略)
「製品ブランド」に「ファミリー・ブランド」や「事業ブランド」「企業ブランド」を冠して使います。二つのブランドを使用するので「ダブル・ブランド戦略」ともいいます。
トヨタのカローラ・フィールダーなどがそれに当たります。この場合は「カローラ」が「ファミリーブランド」、「フィールダー」が「製品ブランド」です。
ファミリー・ブランド戦略
全ての商品に同じブランド名を冠している企業があります。その場合は「ファミリー・ブランド戦略」といわれます。多くは似かよった商品を扱う場合が多いです。
なお多様な消費を扱いつつも単一のブランド名を使用している企業もあります。無印良品は、多様な商品を提供していますが、全て「無印良品」ですね。
分割ファミリー・ブランド戦略
企業が扱っている似たような商品を、いくつかに分けて、数個のブランドを使用していく場合は「分割ファミリー・ブランド戦略」となります。ファーストリテイリングは「ユニクロ」と「GU」に分けて衣料品を提供していますが、まさしくこの例です。
マルチ・ブランド戦略
個々のブランドをそれぞれ独立した形で使用します。缶コーヒーのジョージアは、上位の企業ブランドである「コカ・コーラ」は通常は付けずに広告などを行なっています。
ブランドプラスグレード戦略
ブランド名に商品のグレードを付加して命名します。商品イメージや市場でのポジションが似通っている場合に採用されます。たとえばメルセデスベンツは車種が異なってもトヨタのようにブランドを複数作らず、セダンとミニバンであってもC-ClassとV-Classといったような形で命名しマネジメントしています。
(出典:和田充夫,恩蔵直人,三浦俊彦(2012)『マーケティング戦略 第4版 』有斐閣)
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