ブログの記事 文章の量を増やすには
子供のころ、宿題やテストで決められた文字数を満たせないときどうしてましたか? 私は改行する、形容詞・副詞をやたら入れる、句読点を増やす、漢字を「かな」にするとか姑息な方法で、文字数を増やしてました。でもさすがに大人になってそんな幼稚なことはできませんよね。 文章の量は多ければ多いほどよいということではありません。短くても要点がきちんとまとまっていて、わかりやすければそれに越したことはありません。 とはいえ、ブログなどを書くときは、それなりの濃い内容を書きたいと思いますよね。それではプロはどうしているのでしょうか? 私はフィクション(小説やエッセイ)の文字数を増やすやり方は知りません。 ですがノンフィクション、特に説明文的なものでしたら、時間があれば、それなりの量をほぼ自動的に文章を作ることができます。これは大学や研究機関で研究や執筆をおこなっているプロはみな知っています。 それは、書こうと思っているテーマについて、徹底的に問いかけをするというものです。 ほかにも、プロは「情報収集」「マインドセット」も工夫して乗り越えるのですが、一般の方にとってやりやすいのは「質問する」という方法でしょう。テーマを掘り下げる2つの方法
問いかける、質問するのが良い理由は、人間の思考自体が、問いかけからできているからということがあります。問いかけで中身を創っていく方法が最も自然で質もよいからです! 人は、起きてから寝るまで、いろんな思考を頭のなかで巡らしています。それはたいがい「質問」の形をとっているといわれてます。 ・今日の昼食はどうしようか? ・さっき、上司が不機嫌だったけど何かあったのかな? いかがでしょう。日常、頭の中ってこうではありませんか? 人の頭の中ではこうした問いかけが発生すると、自動的に脳内の記憶データべースが検索され、回答が導かれるようになっているようです(正解とは限りませんが)。 人間は問いかけがあったとき、ほぼ100%、文章が半強制的に生み出されるのです。これを使わない手はありませんよね。 この人間のユニークな性質は、テーマについて内容を深堀する、本質を探るための方法として昔から使われてきました。使いやすい方法がいろいろとありますので、代表的なものを紹介します。 二つありまして、「そもそも法」と「ビリヤード法」です。ちなみにこうした方法は、論文・レポートの書き方を説明した書籍に載っていますので一度眺めてみることをお薦めします。◎そもそも法
まず試すとよいのは、テーマ自体について、それは「そもそも」どういうことなのか?と問いかける方法です。そもそも法というのは、私の造語です。 私たちは、テーマを与えられるとテーマ自体は疑わず、一目散に回答を探そうとする癖があります。そこを逆手にとった方法で、テーマや質問自体の意図、定義をあらためて問い直すのです。すると以外に新しい面が見えてきたりします。 使ってみると「そもそも」という言葉は、このためにあるのではないかと思うくらいです。 例えば「糖質制限ダイエット」について、文章を書くとします。たぶん、ふつうこの言葉を聞くと「糖質制限ダイエット」の真偽や効果、方法、歴史について書こうとしてしまうと思います。 ですが、「そもそも、それって何なのか?」と自分で自分に問いかけてみてください。いろいろ出てくると思います。 そして書き出すのは頭に浮かんだ新たな問いです。 私は次のような疑問が浮かびました。「糖質」とはそもそも何か? 「糖質」は炭水化物か。それとも違うものなのか? 糖類っていう似た言葉があった。それとの関係は? 酒って全部糖質だったか? 「制限」とは何をどう制限するのか。 取り入れる絶対量を減らすのか? それとも糖尿病のように期間やタイミングを調整すればいいのか? 「ダイエット」とはそもそも何か? 英語、それとも和製英語なのか? 体重を減らすことか? 食事を制限することなのか? 100kgを超えるような病的なものを除いて、医学的にダイエットは必須なのか?ちょっと15分ほど考えて出てきた疑問です。結構出てくるもんですね。この新たなに創られた「問い」について思考を巡らすことで、質量ともに優れた文章を書けるようになります。 この問いかけを真剣にやると、物事の意外な面にも気づけるので、問題の根本が見えてくることがあります。哲学の世界ではよく使われます。 以前、哲学者マイケル サンデルの本がヒットしました。「正義」についてでしたが「そもそもそも何か」を問いかけることから始まっていたように思います。 これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 重要なことは、この問いかけで考え始めるといいですよ。
◎ビリヤード法
これは哲学者である戸田山氏の提唱する「ビリヤード法」という問いの立て方です。 「そもそも法」は定義を中心とした問いかけですが、こちらは、あらかじめ用意されたよくある質問のパターンが13個用意されており、順番にそれらについて浮かんだ「問い」を書いていくことで、テーマについて深堀りしていくという方法です。 こちらも「糖質制限ダイエット」を例に回答を考えてみます。「糖質制限ダイエット」についてビリヤード法を使ってみる 〈本当に? 信ぴょう性〉 糖質制限ダイエットって本当に正しいのか? 医者は全員支持している? 〈どういう意味? 定義〉 糖質を制限するとはどういうことか? 〈いつから/いつまで? 時間〉 どのくらいの期間続けるのか? 〈どこで? 空間〉 他の国では行われているのか? どこに専門家や病院はあるのか? 〈だれ? 主体〉 誰が実行して成果を出したのか? 誰が指導しているのか? 〈いかにして? 経緯〉 どうして話題になったのか? なぜ糖質ダイエットは痩せるのか? 〈どうやって? 方法〉 どうやって成果があると証明したのか? 糖質ダイエットの方法は一つか、それともたくさんあるのか? 〈なぜ? 因果〉 糖質だけが太る原因なの? 〈他ではどうか? 比較〉 糖質の種類によって効果は変わるのか? 蛋白質や脂肪の取り方の割合によって効果は変わらないのか? 〈これについては? 特殊化〉 糖質ダイエットは特定の人だけに効果があるではないのか? 〈これだけか? 一般化〉 単純に他の栄養素を取らなくてしても同じ結果になるのでは? 〈すべてそうなのか? 限定〉 あらゆる年齢、性別、人種、持病、生活環境においても有効なのか? 〈どうすべきか? 当為(対策)〉 糖質制限ダイエットの最も効果的な対応方法は、対象者は? やってはいけない人はいるのか? 出典:戸田山和久(2002)『NHKブックス 論文の教室 レポートから卒論まで』日本放送出版協会p.121を改変さて、いかがだったでしょうか? 私は20分ぐらいでこれだけの疑問がこの「糖質制限ダイエット」について出てきました。このビリヤード法は、書き出した疑問についてもさらにやってもOKです。そうしていくと、実に深い掘り下げができますね。 記事はこれらの問いに答える形で書いていけば、まあ、最初の数倍の文章量に増やすのは簡単でしょう! しかも、一つのテーマについて、上記の半分でも回答まで書ければ、その観点や視点の鋭さも評価されます。 この問いをたてるというのは、ビジネスでも、研究でも、スポーツでもすべての成功の礎です。ちなみに、これは教育学では昔から言われていたことです。小中高で教員をやったことがある方なら「授業でよい質問を生徒にすること」(=発問)の重要さはご存知だと思います。 今回の説明の発端は、長文が書けないことをどう解決するかということでしたが、上記の二つの方法を実行すれば、長文になるだけではなく、中身も充実したものになります。 文章をたくさん書くということためだけでなく、深い内容を書くというためにも、「そもそも法」と「ビリヤード法」を使うことはお薦めです。