強みの定義
では強みとは何でしょうか。代表的な定義を2つ掲げましょう。まずは経営学者ドラッカーの言葉です。「ほかの人には難しいが自分には簡単にやれること」 P.F.ドラッカー (2006) 『ドラッカー名著集1 経営者の条件』ダイヤモンド社拍子抜けしましたでしょうか。「えっ何あたりまえのことを言ってるの」と思うでしょう。でも強みのことを突き詰めて考えていくと、確かにこれ以外に定義のしようがないのです。ちなみに日本語の「才能」ということばもほぼ同意義だと思って結構です。 次に世界的な心理学者ディーナーの書籍から引用します。世界各国の幸福度調査などで知られる幸福学、ポジティブ心理学の権威です。
人にもともと備わっている思考、感情、行動のパターンで、本物であり、エネルギーを生じさせ、最高のパフォーマンスを導くもの ロバート・ビスワス=ディーナー 『ポジティブ・コーチングの教科書』草思社 2016年 ※この本は強みとポジティブ心理学、コーチングの全てが学べる超お薦め書籍です。ドラッカーと比較すると、(1)パターンと言う言葉を使っていること、(2)感情とかエネルギー(やる気、モチベーション)と関係があること、を加えている点が異なります。 強みについての定義は、他にもたくさんあるのですが、共通しているのは、その人だけに特有な、成果を出せる能力に着目した点です。人間というのは根本的に皆違うし、違っていいんだと肯定したことが凄いことだと思います。今までのビジネスや教育の世界では、人々の個別の違いについてはほとんど無視してきました。大きな進歩でしょう。 そしてもう一つの特徴は、弱みは補強しないというスタンスです。もちろん対処は考えますが(他人に代行させるなど)、そこを平均に近づけるといった努力は不要としています。 ビジネスで求められるものは、最終的に結果、成果であることは言うまでもありません。そうした最終成果に結びつく個々人の「何か」を強みとして活用し、弱みについては適切なフォローをしていくということをドラッカーやディーナーは提唱しているのです。 一般に世間でも職場でも学校でも、弱点や短所を無くすことを重視する人は大勢います。しかし、ことビジネスという成果第一の場においてはそうではないということです。これはマネジメントの面で大きな革命です。 ちなみに強みは、自己啓発業界の人が適当にいっていると勘違いしている人がいますが、心理学の論文も多数ある科学で証明された事実です!
「強み」が脚光を浴びている理由
話は変りますが、この「強み」がビジネスの世界で取り上げられることが増えたのはなぜでしょう。それはギャラップ社が、ストレングス・ファインダーというツールを開発し、客観的に強みを測る技術を開発し、その調査結果を積極的にPRしたことが大きいです。ちなみにギャラップ社というのは大統領選の予測を始めとする世論調査会社でこの会社のクリフトン会長が提唱したものです。以下の本が代表的ですが、他にも何冊か出版されています。
『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす』
著者:マーカス バッキンガム | 出版日:2001-12-01
出版社:日本経済新聞出版社 | ASIN:4532149479
強みの内容
では起業家は、どのように強みを扱っていけばよいのでしょうか? 再度ドラッカーの言葉を引用させていただきます(個人的にドラッカーは大好きです)。「何ごとかをなし遂げるのは、強みによってである。」 「最高のキャリアは、あらかじめ計画してできるものではない。自らの強み、仕事の仕方、価値観を知り、機会をつかむよう用意をした者だけが手にできる。」 (P.F.ドラッカー (2000) 『プロフェッショナルの条件』ダイヤモンド社、初出は1966年)強みは人間の性質を、成果やパフォーマンスと言った観点で評価した表現だといえます。その人が過去に平均を超える成果やパフォーマンスを産む点を言葉にすればOKです。理想は 具体的には以下のようなものが強みです(例は私の強み)。
- ものごとを大局的俯瞰的に見られる
- 整理整頓がうまい
- 自分自身に直接関係ない物事の本質がわかる
- その人本来の素の良さがわかる
- 生活収入を確保できる
強みの種類
強みは大きく分けて3種類あります。動的な強み1つ、静的な強み2つです。- 一般的な強み(動的)
- なってしまう強み(静的)
- 存在系の強み(静的)
1. 一般的な強み
一つ目がいわゆる一般的な強みです。強みというと、本人が能動的に動くというイメージがありますね。例えば・・・- 数字のデータを扱うのが正確で早い
- 人々を共感させ説得するのがうまい
2. なってしまう強み
特にその人が能動的に働きかけずとも受動的な形で成果が出てしまうパターンです。- 電車やバスが混んでいてもなぜか必ず座れる
- お金が無くても必ず月末までに臨時収入が入る
3. 存在系の強み
その人がそこにいるだけで成果が出てしまうパターンです。- その人がいるだけで店舗に客が入ってくる。(天候や曜日に関係なく)
- その人がいるだけで職場がすごく和やかになる。
強みを起業に活かす手順
起業の初期は、とにかく他者よりも秀でた部分で勝負すべきです。 何よりベースとすべきは起業家の強みを活かしたビジネスを構築することです。強みを起業に活かすには、次の3つのステップで検討していきます。 自分の強みを発見・発掘する 自分の強みを活かせる環境を探す、創る 自分の強みを検証し磨く、展開する 強みや才能の専門家は最近増えていますので?の発見発掘に困ることは無いと思います。ただ?と?をおざなりにしてしまっている方が多い気がします。起業家にとって必要なのは?と?です。忘れないようにしてください。こちらのサイトで順次説明していきます。まとめ
こちらでは、以下のことをお伝えさせていただきました。- 強みの定義 ひとことで言うと「人に比べて自分が簡単にできてしまうこと」です。
- 強みが脚光を浴びている理由 欧米の心理学者がよりよい人間の生き方に役立つ模索した結果、「強み」の重要さに気づき、積極的に啓蒙し始めたからです。
- 強みの内容 人よりも簡単に結果が出せることです。それほど厳密に考えずに、ピックアップしていってOKです。
- 強みの種類 一般に考えられてる強み以外に、通常はわかりづらい、なってしまう強み、存在系の強みというものがあります。どれも大事です。
- 強みを起業に活かす手順 次の3ステップです。 (1)強みを見つける⇒(2)強みを活かす場を用意⇒(3)結果を検証し磨く
今後の「強み」記事の掲載予定
起業家が知っておくべき強みについて、次のような内容を書いていく予定です。- 強みをみつけるため方法
- 強みを活かす方法
- 弱みをどうすべきか
- 強みと感情、やりがい
- 強みと才能の違い
- 強みを無視すべき時
- 強みとパーソナリティ