SWOT分析 看護師さん向けの事例【無料パワーポイント生ファイルダウンロード 】

看護師さんがSWOT分析を行う場合の事例を書きます。SWOT分析は通常は企業で事業や製品の戦略を作成するためのフレームワークとして使われています。ですが、使い勝手の良さから最近は医療や介護の分野でも使われるようになってきています。なお筆者である私自身は、SWOT分析自体は理解しておるつもりですが、医療従事者ではありませんので、その点はご了解ください。プロの知見については最後の参考文献をご覧ください。それではさっそく説明に入りましょう。


医療分野でSWOT分析を使う対象

SWOT分析は一般には企業の経営全般、事業や製品を対象として使われています。似たようなことを行うツールは他にもありますが、組織の内部と外部について強み、弱み、脅威、機会の4点をマトリックス(4つのセル)で一覧できる利便性が受け、企業以外でも利用されるポピュラーなツールとなっています。特に看護師さんの職場についてはSWOT分析と親和性があり、使われることが多いです。
この記事を見に来た方はSWOT分析自体はよくご存知だと思いますが、看護師にとってのSWOT分析について、深澤氏の著書より引用させていただきます。

SWOT分析…現状(環境)を内部と外部/プラス要因とマイナス要因で整理する統合型の現状分析(環境分析)ツール
 プラス要因マイナス要因
内部環境強み(Strengths)
★自分たちの組織の優位な点、さらに強化していきたい点。
弱み(Weaknesses)
★自分たちの組織の問題、課題となっている点、強くしたい点。
外部環境機会(Opportunities)
★自分たちの組織にとって「追い風」になるもの、好ましいもの。
脅威(Threats)
★自分たちの組織にとって「向かい風」になるもの、好ましくないもの。
出典:深澤(2015)『SWOT/クロス分析』(p.66)

企業や製品を対象としたSWOT分析分析については以下の記事をご覧ください。
企業向けのSWOT分析SWOT分析・クロスSWOT分析

また病院を対象にした事例については以下を参考にしてください。
病院向けのSWOT分析SWOT分析 病院の事例

以上は、組織を対象にしたものですが、最近では個人を対象に行うSWOT分析もあります。例えば看護師さんが自分自身のSWOT分析をやることもあるようですね。以下が個人向け事例のリンク集です。

個人向けのSWOT分析自己分析(SWOT分析)の参考になるサイト6選

看護師としてSWOT分析を使う目的

SWOT分析を使用するタイミングは二つあります。一つは何らかの目標・テーマを達成するため状況を分析するために使われる場合です。例えば「慢性期(または急性期)の地域医ニーズに応える中核病院になるためには」「入院患者を増加させるためには」といったテーマを設定し、それを一つの軸としてSWOT分析を行うというパターンです。その場合はSWOT分析後、その後の施策を検討するため「クロスSWOT分析」というさらに上の段階の分析を追加します。

もう一つは、特に目標・テーマは設定せず、とにかく組織の抱える問題をあぶり出すということを目的に実施するというやり方です。特に看護師、医師らに目標管理、マネジメントといったものが浸透していなかったり意識が薄かったりする場合、まずは現状を全員が認識し、そうした情報を共有するという目的で行うこともあります。研修でグループワークでやるというのはこちらのパターンでしょうか。

看護のSWOT分析 外部と内部環境

ここで内部環境と外部環境について説明します。このSWOT分析というフレームワークは、自身の組織(=内部環境)と周囲や社会(=外部環境)を並行してみていくことに価値があります。では外部環境というのは具体的に何なのでしょうか。

そもそも外部環境というのは、SWOT分析を行う対象組織(=内部環境)の設定によって変わります。例を挙げますね。

「看護部」についてSWOT分析を行う→「病院内の他部署(診療部、薬剤部、診療部など)+院外の全て」が外部環境。
「小児病棟」についてSWOT分析を行う→「病院内の他病棟(慢性期病棟、急性期病棟、外来病棟など)+院外の全て」が外部環境。

院外の全てというのは、病院を取り巻く「地域社会」の全てですが、どこまで含めるかは、SWOT分析を行うテーマによって決めればよいと思います。大病院なら全国が相手かもしれません。

看護のSWOT分析 手順の説明

前置きはこれぐらいにして、実際のSWOT分析をおこなうための手順を説明しましょう。いきなり4つのマスにすらすらと書ける人はいませんし、またそれは良くないやり方です。

SWOT分析は、4つの構成要素を検討していくわけですが、やる順番が大切です。SWOT分析は言葉としては「S:強み」→「W:弱み」→「O:機会」→「T:脅威」という順番で並んでいますが、分析作業は「機会」「脅威」を含む外部環境から行います。その次に内部環境の「弱み」「強み」に取り組みます。

理由は簡単で「外部環境」がわかるからこそ、内部環境の「弱み」「強み」が決められるからです。

例えば、看護部のSWOT分析を行う場合、病院内の連携がスムーズなのかは重要な検討事項になるはずです。そのとき病院内の各部署の現況を把握できていることが必要です。また今後の医療制度の方向性、地域の利用者さんのニーズ動向も無視できません。そうした外部環境のおおよそのことを最初に把握して分析しておけば、それは頭に残ってますから自然と内部環境分析の質が上がります。順番が大切なことがご理解いただけたと思います。

さて、手順は次の3つのステップからなります。メインは外部環境と内部環境の二つですが、最後にチェックをするステップが入ります。

  1. 外部環境(機会と脅威)の分析
  2. 内部環境(強みと弱み)の分析
  3. 整合性の確認
では、順番に説明していきましょう。

(1)「O:機会」と「T:脅威」~外部環境の未来を予想します~

まずは外部環境です。外部で現在起こっていること、また近い未来に起こってくることを予想します。あくまで対象となる組織に大きな影響を与えることだけでOKです。
チェックしていくべき項目をまずは列挙し、その後一つ一つについて確認していきます。自分の組織に当てはめたとき発展や成長につながると思えたら「機会」へ、衰退や縮小につながると感じたら「脅威」に区分し、その具体的な内容を箇条書きで書いていきます。
本来は分析者が項目を洗い出すところから始めるのですが、ここでは一般的な病院を想定して項目を掲げてみました。一つのヒントとして参考にしてみてください。看護師さんがSWOT分析を行う場合は、大部分は看護部なり病棟、診療科が対象となると思うので院外と院内に分けてリスト化しました。

■外部環境検討項目(病院外)

  1. 人口(国内、近隣、年代別)
  2. 利用者数
  3. 行政/法律の施策、診療報酬制度
  4. 主要なステークホルダー、取引先(地域行政機関、厚労省、製薬会社、卸、基幹病院など)との関係
  5. 地域の景気
  6. 地域における利用者のニーズ
  7. 他業界の新規参入、代替サービスの登場
  8. 地域における医師、看護師、技師、職員の需給
  9. 地域における医師、看護師、技師、職員らの平均的なニーズ(やりがい、待遇、福利厚生)

■外部環境検討項目(病院内)

  1. 各部署のニーズ
  2. 各部署の要員の充足度
  3. 各部署の要員の熟練度
  4. 各部署との連携の状況(連携のしやすさ等)

各部署のニーズについては、自分の部署に対することを中心に分析してみますが、重要度と緊急度を念頭に置いて考えるとアイデアが出てきやすいです。

(2)「S:強み」と「W:弱み」~内部環境の過去から現在までを分析~

次は内部環境の分析です。自らが属する組織について、過去から現在までの経緯を振り返り、以下の内容について確認していきます。
すでに行った外部環境の分析と同様に、チェックしていくべき項目をまずは列挙し、その後 一つ一つについて確認していきます。自分の組織に当てはめたとき、その回答が「強み」と思えたら「強み」へ、「弱み」だと感じたら「弱み」に書いていきます。内部環境についても医療業界、特に病院を想定して項目を掲げておきます。参考にしてください。

■内部環境検討項目(病院内)

  1. 競合する医療施設に対して優位な点、劣っている点
  2. 治療、看護の技術レベル
  3. 治療、看護についてウリになることの有無
  4. 利用者の持つイメージ
  5. 病院内で他部署の人たちが持つイメージ
  6. 治療/看護をバックアップする仕組み、組織、能力
  7. 自部署に所属するメンバーの能力・モチベーション
  8. 設備機器がそろっているか、新しいか、その整備状態
  9. マネジメント(指揮系統)
  10. 組織のまとまり、風通し、仲の良さ、チームワーク
  11. タイム・マネジメント(指揮系統)
  12. 目標、戦略の策定能力
  13. 目標、戦略の実行能力
  14. 新しいことや改善活動(看護、治療、マネジメントなど)への取り組み姿勢
  15. 要員の充足度、採用の体制
  16. 要員の熟練度
  17. 若い要員のトレーニングの仕組み
  18. ベテランのトレーニングの仕組み
  19. 待遇、ワークライフバランス
  20. その他

(3)整合性、事実の確認

とりあえず4つの欄が埋まったら、一度見直しましょう。以下のことをチェックしてください。

(1)ダブリはありませんか?
同じ内容なら整理して一つにまとめましょう。

(2)書かれたことは事実でしょうか?
思い込みで書いてはいけません。客観的なデータで必ず確認しましょう。

(3)矛盾は無いですか?
整合性が取れるようにしましょう。

(4)漏れはないですか?
ちなみに、内部環境と外部環境の各項目について検討していくとき、単純に結論が出ない場合があります。その時は考えられる可能性はすべて記載しましょう。例えば「地域の高齢化」という外部環境の変化は、以下のように「機会」にも「脅威」にもなり得ます。

注意
(例)「地域の高齢化」が予想できる場合

「脅威」となる可能性 → 高齢者には認知症、転倒への対応などに対応できる体制が必要だが要員が不足している場合。

「機会」となる可能性 → 高齢者は疾病にかかりやすいので、利用者の増加につながる

完璧を目指さない!
真実に近い分析を短時間に、かつ人々を感心させるような分析は、プロフェッショナルしかできません。参考にですが一般企業のSWOT分析は、企業の命運をかけるようなシビアなSWOT分析は数百人に1人ぐらいしかできません。それができるのが経営トップなのです。良くも悪くもこうしたフレームワークによる分析というものは「真の正解」には一発ではたどりつかないと思っているほうが賢明です。

SWOT分析 看護部の分析事例

大都市にある総合病院の看護部についてSWOT分析した場合を事例として掲げます。

病院の概要:
30年以上の診療年数。急性期医療からリハビリテーションまでサービス提供が可能な医療機器及び設備・スタッフを有している。

●強み

  1. ベテランの看護師が多数
  2. 職員や医師など部門間のコミュニケーションが取れている
  3. 他部門とのコミュニケーションがよく取れている
  4. 緩和ケア認定看護師が複数いる

●弱み

  1. 在宅支援に関する看護師の知識が全体的に不足気味
  2. 看護学校とのつながりが弱い
  3. 緩和ケア以外の専門スキルを持つ看護師がいない
  4. 新人を育てる仕組みが不十分

在宅支援に関する看護師の知識が全体的に不足気味

●機会

  1. 高齢化が進展し後期高齢の利用者増が確実

●脅威

  1. 景気が悪く可処分所得が減少
  2. 家族、患者ともに要求水準が高まってきている
  3. 医師・看護師ともに人手不足が続いている

上記のパワーポイントのファイルをダウンロードできるようにしておきます。お役に立てば幸いです。

SWOT分析 看護師編パワーポイントファイル(pptx)



参考文献

基本的にはこの一冊で十分。看護師さんが経営学のイメージをを掴むのにちょうどいいです。MBAを持ってる看護師さんが、本質を踏まえた上で書いているんでおすすめです!

SWOT/クロス分析

『SWOT/クロス分析』

著者: 深澤 優子
出版社: 日総研出版
出版日: 2016-01-01
ASIN: 4776017741
ISBN-10: 4776017741
ISBN-13: 9784776017745





以下の2冊は、病院経営に携わっている人向けです。看護師長さん以上でしょうか。どちらかを読めば、SWOT分析、クロスSWOT分析、バランスト・スコアカードをきちんと学べます。経営学者の書いたものより実践的でわかりやすいですね。
医療経営のバランスト・スコアカード―ヘルスケアの質の向上と戦略的病院経営ツール

『医療経営のバランスト・スコアカード―ヘルスケアの質の向上と戦略的病院経営ツール』

著者: 高橋 淑郎
出版社: 生産性出版
出版日: 2004-11-01
ASIN: 482011798X
ISBN-10: 482011798X
ISBN-13:



医療バランスト・スコアカード導入のすべて―構築・展開・成果

『医療バランスト・スコアカード導入のすべて―構築・展開・成果』

著者:
出版社: 生産性出版
出版日: 2007-09
ASIN: 4820118706
ISBN-10: 4820118706
ISBN-13:





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