SWOT分析は、企業の戦略を考えるときに使う経営のフレームワークです。使い勝手がよいので最近では個人が新卒の就活、経験者の転職用に使われることも多くなってきています。
確かに就活や転職で行う自己分析には確かに向いているツールです。
今回はこのSWOT分析を看護師の転職を例としてSWOT分析を行うときのコツをお伝えします。面接対策としても役立つよう上位のクロスSWOT分析まで解説しています。ぜひ読んで役に立ててくださいね。今回の分析例の部分は現役の看護師さんに書いていただいています。きっとお役に立つと思いますよ
看護師の転職|SWOT分析での失敗を防ぐ4つのポイント
SWOT分析は切れ味のよいハサミのようなもの。シンプルで使い勝手はいいんで、だれでもそれなりの図が描けてしまいます。でも、それが本当に役に立つかは別です。
転職でSWOT分析を使う時、意識していたただきたいことがあります。以下の5点に注意して書きましょう!
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外部環境は志望する「病院」を想定する
転職者にとっての外部環境は、特定の病院を(もしくは似たような病院をまとめて)設定してください。漠然と始めると混乱します。
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強みと弱みは相対的なもの、外部環境しだいで変わります
あなたの持っている強みと弱みは絶対的なものではありません。あなたの強みと弱みはA病院とB病院では変わる可能性があります。A病院では強みでもB病院では弱みということもありえます。
(例)管理人はパソコンが得意で少々のプログラムも書けました。転職先として考えていた食品卸の中小企業A社では、パソコンに詳しい人は社内に皆無だったので、管理人のIT能力は「強み」といえました。しかしIT系のベンチャーB社で、管理人程度のITスキルは社員としては当然持ってるべき最低限のレベルでした。ゆえにB社で私のITスキルは「弱み」としかいえませんでした。
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強みと弱みは、あなたの資質のなかで成果につながるものを書く
笑顔が素敵、ほがらか、人当たりがよいなどは、「強み」にはなりません。何かしら、仕事上の成果につながるものを強みに書きましょう。
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目的を明確にして始める
就活でSWOT分析クロス分析を使うなら、「面接選考」の優位性確保が目的とすべきです。面接を突破せずして内定は出ませんから。面接でのトークを意識してSWOT分析をやっていきましょう。
以上に注意してSWOT分析をすれば失敗することはなくなります。
そもそもSWOT分析とは?
SWOT分析を、就活の自己分析に使う場合、4つのマス目は次のような意味を持ちます。
- 強み (Strengths):受けたい会社や業界における自分の強み
- 弱み(Weaknesses):受けたい会社や業界における自分の弱み
- 機会 (Opportunities):受けたい会社や業界のポジティブなものごと
- 脅威 (Threats):受けたい会社や業界のネガティブなものごと
(目的に対して)ポジティブ | (目的に対して)ネガティブ | |
内部環境 | 強み (Strengths) | 弱み (Weaknesses) |
外部環境 | 機会 (Opportunities) | 脅威 (Threats) |
SWOT分析の実行
では実際に個人の分析をしてみましょう!
前にも書きましたが、転職における自己分析の目的は、面接でよいコミュニケーションができるよう、そのための自分の武器を見つけることです。これは意識しておいてくださいね。
今回は看護師のAさんがB病院を受ける場合のSWOT分析例です。ここでは外部環境=B病院ということになります。
B病院の説明…
地方都市にある、病床数500ぐらいの精神科病院
B病院の選考を受けると仮定し、最初にB病院の「機会」と「脅威」を予想し記入します。その後、自身の強み、弱みを書いていきます。
強み、弱みはゼロからひねり出すのは大変なので、ネタとなるリストを掲げておきます。外部環境に応じて、以下の項目について一つ一つ該当するものを書いていけば強み弱みはすぐに埋まります。
- 年齢
- 健康
- 学歴
- 勉強(得意科目、卒論研究テーマ)
- 看護研究実績
- スポーツ
- 趣味
- 性格
- 対人関係のスキル(協調性、リーダーシップ)
- レジリエンス(忍耐強さ、タフネス)
- 臨床経験、実務経験
- ものごとに取り組む姿勢
- 価値観/世界観
- 看護観
- 家庭での役割(夫、妻、母親、父親、両親の介護など)
- 教養
- 委員会活動
- 問題処理能力(インシデントなど対処能力)
- コミュニケーションスキル、アサーションスキル
では、SWOT分析の例を書きます。
強み (Strengths)
- 年齢が20歳代後半である
- 大学で糖尿病についての卒業論文を執筆している
- 探究心が強く、責任感があり、一生懸命取り組む
- 褥瘡委員会に所属していた
- 在宅での看護の経験がある
- スキルアップに積極的
- 患者さんの話をよく聞くことができ、じっくりと関わりたいと考えている
弱み (Weaknesses)
- 家庭では妻および母親の役割があり、夜勤ができないことや急な勤務変更などを依頼せざるを得ない場合がある
- 臨床経験が少ない、看護研究実績がない
- 精神疾患を患っている
- 上司とのアサーティブなコミュニケーションスキルが未熟である
機会 (Opportunities)
- 急性期から在宅看護まで幅広い領域を得意としている精神科病院である
- 日勤のみの求人がある
- 育児休業取得者が多いなどの子育て世代に理解のある職場である
- 残業がほとんどない
- 教育、研修制度が充実している
脅威 (Threats)
- 給料水準が低い
- 公休が少ない
- 精神科のみを取り扱う病院である
- 精神疾患患者への退院支援、在宅へ移行する動きがあり、在院日数が減少傾向にある
以上をSWOT分析テンプレートに展開したものが以下の図表です。このように書いていくと、受ける病院のこと、あなた自身のことが、頭の中でリンクしながら深まっていくことでしょう。ぜひ、あなたも以上を参考にSWOT分析をやってみてください。
強み、弱みを探ってみることは自己を分析する大切なきっかけとなります。また、今回は弱みとして捉えた、母親の役割ですが、これは強みにも変えることができます。それは、自身の考え方、価値観が影響しますので、自由に決定してよいかと思います。
また、必ず自身のワークライフバランスについても明確にしておいてください。それに沿って対象の就職先について分析が容易となります。
このSWOT分析図はパワーポイントで作成しています。元のパワーポイントのファイルはボタンをクリックすればダウンロードして使えますのでよかったらどうぞ。
看護師 転職 SWOT/クロスSWOT分析
パワーポイント(PPTX)ダウンロード
クロスSWOT分析
SWOT分析だけでも結構、やった感はでるのですが、これで終えてはもったいないです。せっかくですのでクロスSWOT分析もやってみましょう。やり方はそれほど難しくありません。
先ほど書き出した強み、弱み、機会、脅威をクロスSWOT分析のシートに転記します。
転記が終わったら、4つのマス(機会✕強み、脅威✕強み、機会✕弱み、脅威✕弱み)を以下の通り埋めていきます。
機会✕強み
病院の「機会」に対して、自分の「強み」を活かすために行いたいこと
脅威✕強み
病院の「脅威」に対して、自分の「強み」を活かすために行いたいこと
機会✕弱み
病院の「機会」に対して、自分の「弱み」が足を引っ張らないよう「弱み」を克服する、もしくは「弱み」をカバーするために行いたいこと
脅威✕弱み
病院の「脅威」に対して、自分の「弱み」が足を引っ張らないよう「弱み」を克服する、もしくは「弱み」をカバーするために行いたいこと
クロスSWOT分析の完成例(分析結果)は以下のようになります。
機会✕強み
- 年齢が若く、また性格を活かし、さまざまな領域でスキルアップをすることができる
- 糖尿病についての研究および褥瘡についての知識があるため、身体管理についてそのスキルを活かすことができる
- 精神科の患者さんを対象とすることにより一人一人に寄り添う看護を実現できる
- 退院後を意識した看護を展開できる
転職先にとって即戦力となるかどうか、自分をアピールすることのできる項目です。ここは丁寧に分析を行いましょう。自己PRにも対応できますし、また転職後の活躍についても言及できます。
弱み×機会
- 育児中ではあるが、子育て世代が多く理解をしてくれるスタッフが多い
- 日勤のみの勤務形態により、自身の病気の管理がしやすく、無理なく働くことができる
- 残業がなく、子育てに専念できる
- 自身の病気と同じ対象の患者さんがいることで、その症状など共感することができる
- 自身の病気について、よく理解しているスタッフが多く、相談しやすい
- 臨床経験が少ないため、もう一度1から勉強することができる
就職先に対して、自身の弱みに対してどのように対応するかを伝えます。事例では、精神疾患を患っていることに対して、それを活かした看護、そして、転職することによって健康が保たれるということをアピールすることができます。
脅威✕強み
- 精神科のみを扱う病院のため、急変時内科病棟での勤務経験が活かされる
- 在宅看護の経験を活かし、退院支援への看護に力を入れることができる
- 給料が現在よりも下がってしまうが、年齢が若く、また大学卒のため長く勤務することで昇進へつなげていきたい
就職先が抱えている課題について、自身がどのように活躍することができるかが明確となってきます。抱えてる課題について、経験を活かしながらどう活躍するのかが明確となっていきます。ここは、どの程度転職先の領域について勉強しているかが一目瞭然となります。
弱み×脅威
- 母親役割を達成するために、公休が少なくても家族に対応をお願いし、出来る限り業務に支障のないよう努める
- 自身の体調管理について、公休の使い方、シフトの組み方などを相談する
- 臨床経験が少なく、また精神科のみの病院のため、院外研修に積極的に参加する
就職先に対して自身が足をひっぱらないよう、どのように工夫し克服していくかを明確にします。シフトについて相談をすると当たり前のように思えますが、その基本的な業務ができるかどうかについても採用者は知っておきたい情報なのです。
クロスSWOT分析の結果を面接に活かそう!
いちばん大事なのは面接です。クロスSWOT分析までやったら、実際の面接時の受け答え用に、言うべきトークを考えてメモしておきましょう。
クロスSWOT分析図の、機会✕強み、脅威✕強み、機会✕弱み、脅威✕弱み、の欄に、一つずつでよいので、面接時に言うとよいことをメモしておきます。
自分が実行可能な、具体的な施策を追加してください。具体的な対応方法まで考えていることを伝えれば、かなりの説得力が出ます。仮にそこまで発言する機会がなかったとしても、目に見えない自信となってくれることでしょう。
強みについてもっと深く知りたい方へ
また、自分の強みについてもっと知ってみたい人は、以下の記事をご覧ください! 強みとは何か、どうすれば見つかるかについてかなり詳しく書いてます。
自分の強み 診断 | 診断テスト3種と自己分析法2種《2018版》
自己分析 強みの見つけ方|強み分析テンプレートを無料でダウンロード可
自分の強み・弱みの分析の仕方、活用の方法、そして企業研究のことまで書かれています。個人のSWOT分析に興味があるなら見てみてください。