こんにちは。こちらのぺージでは、新商品の企画を考えるときに役に立つ「アイデアの組み合わせ方」について説明します。 新商品の企画に限らずビジネスで新しいアイデアが欲しい事って多いですよね。実際に使いものになる斬新なアイデアを出すのは誰にとっても難しく苦労するものです。 「どうしたら、よいアイデアを効率よく発想できるか」ということについては、昔から多くの人達が研究してきました。いろいろな方法論はありますが、結論は、 「何かと何かを組み合わせること」 が最も賢い方法であるといわれています。 何も無いゼロの状態からアイデアを作り出すことはとても難しいので、発想の核というか種を用意して、そこからスタートするということですね。では次に、何と何をどのように組み合わせれば、新商品の企画に繋がるのでしょうか? それが一番重要で苦労するところです。ここでは、3つの「使えるアイデアの組み合わせ方」をお教えします。では説明を始めましょう。
とにかく組み合わせる!
アイデア発想の方法論については昔から多くの人が悩んでいました。特に企業の企画部門や広告代理店で働く人たちにとっては、大きな課題であったことは言うまでもありません。実は、こうした部署で働く人たちのためのものともいえる企画法のバイブルが存在します。 『アイデアのつくり方』(ジェームズ・W・ヤング著)という本です。英語の原書の初版が刊行されたのは、1940年。邦訳版も初版は1988年ですがいまも売れています。この本では「人はどのようにしてアイデアを手に入れることができるのか」という疑問に対して2つの原理が示されています。
?アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである ?新しい組み合わせを作り出す才能は事物の関連性を見つけ出す才能に依存する
?の「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」については、わかります。問題は?です。事物の関連性を見つけ出す才能に依存する。さて自分は具体的にどうすりゃいいんだろう? と思いませんか? 結局、見つけ出す才能がないなら原理を知ったところで無意味じゃないか!と思ってしまいます。またヤング以外にも発想法の世界で有名なアレックス・F・オズボーンという人もいます。ブレーンストーミングよる発想法で有名です。この方もテクニックの一つとして「結合」が重要だと主張はしていますが、新商品の発想に役立つ具体的な方法は提示はしていません。 私もこのことをどうしたらよいのか、さんざん悩みました。そして見つけたのが成功する可能性の高い3つの組み合わせパターンです。詳しく説明する前に、まず成功する組み合わせだといえる条件を確認しておきましょう。 新商品・新サービスは、その名の通り消費者にとっては初めて見るものになるわけです。人間は用心深いですから簡単には新しいものに飛びつきません。ですから新商品・新サービス自体が、それを突破できるほどの価値を持ってないといけません。個人的には次のようなことが含まれていれば条件を満たしていると思います。
- 役に立つ…確実に利便性が向上する
- 意外性…今までにないもの、新規性がある
- 面白い…客から強い興味関心を持ってもらえる
以上の3つのうちいくつかが含まれていれば、人も話題にしてくれるでしょうから、その組み合わせは成功の可能性の高いアイデアだと言うことがいえると思います。では私が見つけた3つの使える組み合わせのパターンを紹介しましょう。
- 付加価値の高い組み合わせ
- 既知と未知の組み合わせ
- 真逆・異質の組み合わせ
以上の3つです。一つずつ順番に説明してまいります。
その1 付加価値の高い組み合わせ
最初は付加価値の高い組み合わせです。まあこれは説明するまでもありませんね。確実に利便性が期待できる、人がその商品を見聞きした瞬間これは便利だなと感心するような組み合わせです。
消しゴム付き鉛筆=消しゴム+鉛筆 多色のボールペン=黒色+赤色+青色+… カメラ付き携帯電話=携帯電話機+カメラ スマートフォン=携帯電話機+パソコン
以上のものは我々の生活で、もはやなくてはならないものとなっております。役に立つ組み合わせは、最も単純でわかりやすく、かつ成功する組み合わせといえます。当然と言えば当然ですが、基本です。まずはこれを優先的に検討するのは意味あることだと思っています。
その2 既知と未知の組み合わせ
さきほど説明した「付加価値の高い組み合わせ」は常識的なセオリーでした。 が、この既知と未知の組み合わせは、意外に世間で知られていない組み合わせではないかと思っています。 まず既知と言うのは、お客さんが既に知っている事柄です。そして次の未知というのは、お客さんにとって知られていない、もしくはなじみのない事柄を指します。 普通、お客さんは、未知のもの、初めて見るものは簡単には受け入れません。しかし、既に知っている事柄が含まれるものなら少しは関心を寄せてくれるものです。 既知のものと未知のものが合わさった商品ならば新奇性のある面白い商品だと受け取ってくれる可能性が高くなります。 ではここで、具体例を示しましょう。それは緑茶のペットボトルです。 今では4,000億円の市場規模を持つ緑茶飲料ですが、数十年前には、市場自体が存在していませんでした。そこに緑茶飲料を新商品として投入し、大成功したのが伊藤園です。 この場合、既知のものとは「ペットボトルという容器」。未知のものとは「冷たい緑茶」です。 若い人は知らないかもしれませんが、かつて日本では冷たい緑茶を飲むと言う習慣はありませんでした。ところが1980年代からミネラルウォーターをペットボトルで飲むという習慣が日本で徐々に根付き始めます。 そこで、伊藤園はペットボトルで冷たい緑茶を提供すれば、ミネラルウォーターの発想の延長上で、消費者は冷たい緑茶を飲んでくれるようになるかもしれないと、考えたのだと予想します。 缶入りは1985年にすでに発売しており、冷たい緑茶が受け入れられる素地は徐々にできつつありました。ですが、キャップのついたペットボトルの持つ、いつでも常用できるという利便性は缶にはなかったので、ペットボトルほどのインパクトはなかったようです。 1990年に発売を開始した「お~いお茶」のペットボトルは、あっという間に全国に広がり驚くほどの大ヒットとなりました。あなたも知っているとおりです。今や昔からの急須やティーパックで淹れる茶葉の数倍の市場規模です。たぶん、今の子供にとって緑茶といえば「冷たいお茶」だというのが常識かもしれませんね。 この大ヒットは、ペットボトルという既知のものに冷たい緑茶という未知のモノを組み合わせたのでヒットしたのだと思います。いきなり冷たい緑茶をポンとカフェや喫茶店で単独で出してもダメだったと思います。(実際そうした試みも過去にあったようですが) ちなみにお茶の生産者や販売者の方は冷たい緑茶が美味しいことはよく知っておられ、夏はご家庭で飲まれていたそうです。ですので、冷たい緑茶自体は伊藤園の発明ではなかったということです。尋常ではない組み合わせを生み出した伊藤園のまさに勝利だと思います。
(伊藤園ホームページを参考にさせていただきました)
その3 真逆・異質の組み合わせ
では3番目の組み合わせを紹介します。「真逆、異質の組み合わせ」です。この文字通り、常識では一緒にできないようなものを組み合わせるものです。「驚くほどの意外性」や「思わず人に伝えたくなる面白さ」といったものが成功を支えてくれます。
(例1)フリクション
例として、フリクションというボールペンが挙げられます。これはPILOTが発売した、書いた線を擦ると消えるというボールペンです。国内でヒットしましたし、欧米でもかなり売れているそうです。私も使っているボールペンと蛍光ペンも全てフリクションです。 この商品の特徴は、「書いたら消えないというインク」と「書いても消せる消しゴム」という、誰がどう考えても反対の性質を持った機能を合体させてしまったことです。 そのおかげで、簡単には消えないインクを使いつつ、間違ったら修正できるというとても便利な新商品が生まれたわけです。実用性も高く 1番目の「付加価値の高い組み合わせ」でもあります。みごとな新商品だといえます。
(例2)たっぷりあんこ&クリーム生どら
もう一つ例をあげましょう。今度は食べ物です。食べ物の世界も組み合わせの成功例が多いです。 先日コンビニのスイーツを見てたら「たっぷりあんこ&クリーム生どら」(セブンイレブン)というものがありました。もちろん、実に美味しそうで私はまっさきに購入しました!
(出典:株式会社セブン‐イレブン・ジャパン)
これは和菓子の代表的な素材である「あんこ」と、洋菓子の同じく代表的な素材である「クリーム」を組み合わせた商品です。このあんこと生クリームの組み合わせは、パンやスイーツの世界で試行錯誤されながら少しずつ受け入れられてきたものなんです。 私の実家はパン・お菓子・ケーキを売っていましたので、ふだんから注意深く業界動向を観察しています。 20年ぐらい前から各地のパン屋さんなどでひっそりと似たような菓子パンが売られていたのですが、最近ではかなりの人に受け入れられるようになったようで、ついにコンビニスイーツとしても立派に認められるようになったというわけです。 この組み合わせの素晴らしさは、和菓子&洋菓子と言う、本来は相容れない反対のものを、見事に組み合わせたところにあります。しかも、食べてみればわかりますが、絶妙な美味しさなんですよね。 食品という観点からすると、「?付加価値の高い組み合わせ」でもあったわけです。ちなみに似たものに「あんことバター」という組み合わせもあります(これも旨いですよ!)。
成功のポイント
なお、この真逆・異質の組み合わせですが、成功をさせるには、 1つ重要なポイントがあります。それはその異質さが際立つもの、極端であるものほど消費者はインパクトを感じてくれるので、話題性にもなりやすく成功しやすいということです。 最近いろんな商品でコラボというのが流行っていますね。でもうまくいってないものが多いように思います。例えば伝統工芸品を先進のデザイナーがプロデュースするというのが良い例です。それはなぜでしょうか? 私から見ると、消費者は異質のものどうしの組み合わせの面白さを期待しているのに、見たらそうでもない、中途半端なもので終わっているからイマイチなのだと思ってます。 例えば伝統工芸の食器を、若いデザイナーの方がデザインを工夫したとしても、フリクションレベルの実用性の飛躍的な向上はまずありません。だとしたら意外性や面白さでしか価値はアップできないと思うのです。 とにかく、思いがけないものどうしの組み合わせこそが成功のポイントです。
エンタメ業界での成功例「和楽器バンド」
それでは最後に私の提案する組み合わせのセオリーは、形のある商品だけでなく、エンターテイメントだとしても成立することを実例で示しておきたいと思います。 https://youtu.be/RNNCxzYc2Gg このバンドは「和楽器バンド」という名前のとおり、日本の伝統芸能である和楽器の良さを世界に広げたいということで組まれたユニットです。これほど組み合わせの絶妙さを活かして、成功をつかんだバンドは他に例がありません。このバンドは、組み合わせでいうと、?と?の組み合わせの効果を最大限に生かしてます。 まず楽器の編成自体が「既知と未知」、「真逆・異質」の組み合わせです。
既知=洋楽器 ギター・ベース・ドラム
↓↑
真逆・異質 未知=和楽器 尺八・筝・三味線・和太鼓、 ボーカル 詩吟の師範
洋楽器と和楽器が両方ともバランスよく入っています。主従の関係ではないところがミソです。よく似たコンセプトのユニットはあるのですが、鳴かず飛ばすといった感じのユニットが多いようです。それらは和楽器だけで編成してしまうか、洋楽器を申し訳程度に加えるのが多いです。組み合わせの妙を狙うのであれば、対等なレベルに編成しないとダメですね。 それから、一番驚かされるのは楽曲です。ボーカロイドをカバーしていることです。初音ミクに代表されるボーカロイド(以降ボカロ)は、コンピュータのみで楽器から歌声まで作る音楽です。音楽シーンで最も先端的な分野です。 和楽器バンドは、そのコンピュータがボーカルまで演奏する、人工的な雰囲気のする楽曲を、和楽器&洋楽器で演奏し、詩吟の師範が歌い上げるわけです。 その組み合わせは、誰でも驚くと思いますが、ボカロが好きな人にとってはメチャクチャ、インパクトがあります。私もその一人でした。 ボカロ好きにとっては、和楽器演奏でのカバーは、いやでも興味・関心が湧くと思います。以下のような構図ですね。
既知=ボカロ(ボカロファンにとって)
↓↑
真逆・異質 未知=伝統古来の和楽器+詩吟の師範
さらに、付け加えると、ターゲット選定が英断だったと思います。和楽器をアピールするなら普通なら年齢の高い層を狙いませんか? ボカロを聞く10~20代を対象としたのは、なかなかの決断だったと思います! また和楽器バンドのメンバーはYouTube上に動画をアップし露出もしていました。和楽器とYouTubeという組み合わせも、結構な異質性がありますから相乗効果はあったと思います。下記は津軽三味線での「進撃の巨人(紅蓮の弓矢)」演奏です。 https://youtu.be/P0yD9FN7JGs 和楽器バンドがいかにうまくいったか、経過も載せておきましょう。
2013年3月:和楽器バンド結成。 2014年1月:渋谷Club Asiaで初の単独ライブ 2014年4月:VOCALOIDのカバーアルバム『ボカロ三昧』リリース。 2014年7月:初の海外公演となる『第15回Japan Expo』に出演。 2015年4月:テレビ朝日『ミュージックステーション』地上波テレビ初出演。 2015年9月:2ndアルバム『八奏絵巻』、オリコン週間ランキング初登場1位。 2016年1月:日本武道館にて単独ライブ開催。(出典:和楽器バンド Official Site)
無名の和楽器からなるユニットが、デビューから3年もかからずに武道館ライブをおこなったことは史上初です。みごととしか言いようがありません。 私のまわりにも和楽器を演奏する知人がいます。ですが和楽器を広げようとしても、その発想がまだまだな気がしてます。ぜひ「和楽器バンド」をお手本として活躍してほしいと思っています。
まとめ
新商品のアイデアを発想する方法としては、既存の要素の新しい組み合わせを考えるというのが一般的です。しかしより良い組み合わせのコツについては、今まで語られることがなかったので、こちらのページで3つのヒントを明らかにしました。
- 付加価値の高い組み合わせ 実用になる、実際に単独で使うよりも大幅に使い勝手が向上する
- 既知と未知の組み合わせ 顧客が知っているものに、知らない何かを組み合わせたものを企画する。
- 真逆・異質の組み合わせ 顧客にとって容易には結びつかないものを組み合わせる。
この3つをいくつか使えば、かなりの率で、成功する確率が高まると思います。 またアイデアを出す場面で、 「質より量が大事だ、まずはたくさんアイデアを出せ!」 という方も多いです。 それはそうなのですが、たくさん出したところで最終的にアイデアを絞り込んでいかなくてはいけません。その際に良いアイデアを選択する「基準」が必要となります。本書で提示した3つのヒントを、ぜひ参考にしていただければと思います。