よきビジネスパートナーを選ぶには?
では自社の命運を左右するかもしれないビジネスパートナーとはどのように選べばよいのでしょうか? 世の中の成功例は、たくさんあると思いますが、今回は私の大好きなマンガ「ゴルゴ13」を例にお話しましょう。 「ゴルゴ13」は、さいとう・たかを氏による漫画で、超一流のスナイパー(狙撃手)である「ゴルゴ13」の活躍を描いたものです。彼はどこの組織にも属さない一匹狼ですが、実力は超一流。多額の報酬と引き換えに人やモノの狙撃を請負い請け負った仕事はどんな難題であろうと完遂します。 孤高で人には決して頼らないように思えるゴルゴ13ですが、実は請け負った仕事の多くは彼一人では実行できないものがほとんどです。実は、ビジネスを遂行する上で、ゴルゴ13の協力者選び、つまりビジネスパートナー選びは死活問題なのです。 まず案件についての情報収集、そして依頼人についても裏切りなどの裏を取ります。そうした場合はまず情報屋と呼ばれる、情報収集のプロに依頼します。また狙撃に使う銃などの武器の製作や整備は銃職人等、案件ごとに諸々のプロたちを自在に探して使い目的達成を果たしていきます。 依頼されたプロは、その世界でも超一流。たまに裏切ってゴルゴ13を敵に売ろうとしたり、亡き者にしようとしたりもしますが、それでも依頼した仕事だけは完璧に遂行したあとというのが、さすが凄いところです。 依頼するプロたちは、ゴルゴ13が命を預ける場合もあります。飛行機の操縦、自分が大怪我や伝染病に侵されたときに診察を受ける医師などです。ゴルゴにとって、狙撃する瞬間はもちろん命がけなんですが、ビジネスのパートナーを選ぶことも実は生命が懸かっているんです(←大事)。 普通のビジネスでは、自分の命を懸けてまでの選択ってないと思うんですが、ゴルゴ13は毎回大変な決断をしているわけですね。 では、彼は何を持っていざ言う時のパートナーを選んでいるのでしょうか? 二つあります。ビジネスパートナーを選ぶ基準?「世界一流のレベル」
まず彼の選ぶ基準の一つ目は「世界一流のレベル」だということです。国籍や民族、思想、年齢にはこだわりません。あらゆる手段を使ってその道のプロを探し出しているようです。銃職人、調達屋、技術者、などいろんな人物が登場します。 例えば、愛用している銃の改良を依頼したのはベリンガーという?「精密加工の神様」と呼ばれるスイスの銃職人。 彼の使用する革手袋はイタリアのウンブリア州アッシジの山奥に住んでいる老人のハンドメイド。 時計はスイスにいる、天文学と数学にも造形が深い、完璧な精密さを持つトゥールビヨンといわれる構造の時計を作れる、やはり世界随一の時計職人です。 こんな人達ばかりが続々と登場してきますので、ここだけでも興味を持って読めちゃうんです。ビジネスパートナーを選ぶ基準?「成果への執念」
二つ目は、成果への執念です。目標達成への意志力ともいえます。私はこれが最も重要だと思っています。ゴルゴ13の依頼は暗殺の仕事がほとんど、ゴルゴも命がけですが手伝う事も同じく犯罪。場合によっては命がけです。 それでも敢えて仕事に関わってもらい、完遂してもらうには本人が「仕事に妥協せず、諦めずにやり切る信念」をどれくらい持っているかにかかっているんですね。 第564話「最終兵器小惑星爆弾」での話です。ニューヨークにいるデイブ・マッカートニーという銃職人は全米で5位に入る銃造りの名人です。彼はゴルゴの要請で、はるかロシアまで拉致に近い形で連れて来られてしまいます。 その上でなんと地球に接近する小惑星を破壊するための「とてつもない巨大な銃」の改造と調整を依頼されるです。普通なら、逃げ出したくなる状況です。それでも彼はゴルゴ13の依頼ならということで、その場で受託しみごとにやり遂げます。(この一話だけでも映画に成り得るストーリーです)人物・人柄は二の次!
以上の二つが、ゴルゴ13が仕事を依頼する条件だと私は思ってます。それゆえに、通常気にするような誠実さやコミュニケーション力、は二の次なんですね。結構ズルそうで友人にはしたくないような連中にも実は仕事を依頼したりしています。 偏屈だったり、老齢だったり世間から爪弾きにされているようなプロもいます(まあ裏の世界だからかもしれませんが)。あくまでも人物本意なんですが、ちょっと変わった人物本位ですね。ビジネスパートナーとの関係構築
以上までが、ゴルゴ13がプロフェッショナルを選ぶときの基準でした。しかし、彼が命がけの仕事を成功させるため、ビジネスパートナーに配慮していることは他にもあります。それは、選んだあとの関係構築です。ゴルゴ13なりに心がけているいくつかの工夫があるんです。ビジネスパートナーとの関係構築? 魅力的な仕事
一つ目は、依頼されるプロにとって、やりがいのある魅力的な仕事内容であることです。 まず、依頼されるプロたちは、闇の世界で超一流と言われるゴルゴ13の仕事をすること自体を誇りに思っています。違法の世界の人たちもやはりプライドがあり、一流のクライアントを持てる事自体が嬉しいのですね。彼ら自体のモチベーションが上がるわけです。逆にこれは、ゴルゴ13が彼らにそう思わせるだけの一流の仕事をし続けることが必須ですが。 銃職人のベリンガーなどは、銃身だけで8年の歳月をかけて改良しています。自分の銃がゴルゴ13に使用される事に喜びを感じているからです。そのおかげでゴルゴの狙撃距離は尋常でない長距離を可能にしています。また日本刀の世界で「神様」と称された研ぎ師が、ゴルゴの銃の部品を研ぐこともありました。 また「依頼できる唯一の者」という言葉がプロを奮い立たせることも多々あります。ゴルゴ13の武器・資材を調達するプロはみなそうした言葉にくすぐられ無理難題をこなしてしまいます。 ロス在住のプロの調達屋の老人は 「ミステリーの女王」(147話)では100万ドルの報酬で「F-104」を3日以内に調達する注文を受けみごとにやってのけます。調達屋たちが尻込みするときゴルゴ13は「人のできない事をやるのがあなたの商売だろ」いった主旨のことばを投げかけ、その気にさせるのです。 また変わった依頼のなかには、自らの技の真髄を、ゴルゴ13に伝授するというものもありました。ゴルゴ13が弓の技術を必要としたとき、日本弓術の名手である弥生(やよい)は、ゴルゴ13に技量の全てを教え自分以上の弓の名手に育て上げます(436話「一射一生」)。 これはゴルゴ13という天才に、自らがやってきたことの素晴らしさを認めてもらえた喜びと、伝えられる喜びが二重にあったからだと思います。ビジネスパートナーとの関係構築? 仕事の承認
依頼されるプロは、またその仕事の質をわかってもらうことが、何よりの満足につながります。 まずゴルゴ13は、それをまず報酬で示します。具体額は書かれませんが、誰もがその法外な価格に満足しているようなので、これは間違いありません。 さらに、その質についても評価することを忘れません。ゴルゴ13は基本的に無口なので多くは語りませんが、短く泣ける言葉をつぶやくのですね。 スイスの革手袋の職人には「この数十年右手を他人に預けたのはあんた一人だけ」と語って感動させます。ゴルゴ13は「利き腕である右手を相手に常に取られないようしており、握手も絶対にしないのです。(第500話 「史上初の狙撃者 ザ・ファースト・スナイパー」)ビジネスパートナーとの関係構築? 仕事をせざるを得ない状況作り
これは、初めての仕事相手、やや信頼におけそうなない相手の場合にゴルゴが取る手段です。それは依頼相手が、その仕事を途中で辞めないような状況にしておくといったことです。 例えば事情により大金が必要であるとき(借金、家族の病気など)、多額の報酬の得られるゴルゴの仕事は魅力的です。ゆえにちょっとやそっとでは逃げ出さないのです。 さすがゴルゴ13、きちんど保険をかけているわけですね。これは一般のビジネスにも応用できるかもしれません。人と組むときは、お互いに組むしか無い状況にするというのは、ある意味有効な手立てだと思います。いわゆる「背水の陣」を作るということですね。もしもドラッカーがゴルゴ13を読んだら?
ビジネスパートナーの選び方と関係構築について「ゴルゴ13」から学べそうにことをピックアップしてまいりました。 ここで経営学の大家であるドラッカーの言葉を引用したいと思います。実は彼も上記と違いのないようなことを語っていたのです。「人間関係に優れた才能をもつからといって、よい人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や人との関係において、貢献に焦点を合わせることにより、初めてよい人間関係がもてる。こうして、人間関係が生産的なものになる。まさに生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である」 「知識労働者は、自らに課される要求に応じて成長する。自らが業績や成果とみなすものに従って成長する」(出典:ドラッカー『プロフェッショナルの条件』)
私が成果への執念といったいたことを、ドラッカーは「貢献に焦点を合わせること」といっています。そして同じ本の中で一般に人間同士がうまくやっていくための「コミュニケーション」「チームワーク」などは「貢献に焦点」を合わせることで自動的に容易に達成されるとしています。
確かにゴルゴ13の行動を振り返ると一癖も二癖もあるプロ(違法の世界にいるワルも多い)に対しては、コミュニケーションとかチームワークとかを振りかざしません。彼らにそんなことを言っても意味のないことは容易に想像できますし…。
なんとなく感じていたゴルゴ13のパートナー選びや関係の持ち方の特徴は、実は「プロフェッショナル達」の王道であったんですね。もしもドラッカーが「ゴルゴ13」を読んだら、きっと作者の慧眼に驚いたのでは?と思ってしまうのは私だけでしょうか。