経営学のフレームワーク活用に必要な3つのこと

フレームワーク

経営学のフレームワークには3C、SWOT分析、5フォース、PPM、4Pなどいろいろあり、大学の経営学部でも学びますし、社会人も研修などで教わることも多いと思います。

ただし残念ながら、こうしたことを習っても「使えない」と思う方が多いです。これは経営学のフレームワークを使う前提が周知されていないゆえの誤解です。ここではその誤解を解き、使えるようになるためのヒントをの述べたいと思います。

フレームワークは問題解決のための道具

世の中で多いのが、フレームワークを持ってきてそれを埋めるだけで、ビジネスがうまくいくようなヒントが見るかると勘違いされている方が多いです。ですがそれは間違いです。

フレームワークは、経営の先人が自分たちの経営課題を解決すべくいろいろと苦労した中で見つけた道具です。例えていえば、料理で使う包丁のようなものです。それを使ったから素晴らしい成果がでるなんてことは絶対ありません。

料理人が包丁を使って美味しい料理を作れるのは、包丁の使い方が適切だからです。また道具は多種にわたっており、料理によっては包丁なしで作れる料理もあります。フレームワークも包丁と同じです。高価な包丁を使っても美味しい料理が作れない場合は、誰もが料理人のせいだとわかります。

ですがフレームワーク、そして経営学のさまざまな知見は不思議とそのようには認識されていません。まずはこの点を勘違いしないことが大事です。

経営と問題解決

それでは問題解決とは何でしょうか? 「問題」とは、期待している状態と現状に差があることを言います。その差を無くすことを問題解決といいます。おなかが空いたらそれは「問題」であり、食事をして満たせればそれは「問題解決」というわけです。

そう考えると日常生活の全てといっていいぐらい、我々の生活は問題解決の連続なのです。家事、趣味、仕事はみな問題解決の行動です。夕食の準備をするのも、国どうしが戦争をするのも、セールスマンが売り込みをするのも全て「問題解決」なのです。人生とは「問題解決」であるといっても言い過ぎではないと思います。

だから経営そのものが「問題解決」なのです。なお経営活動は「問題解決」だけで完結するかというと、そうではなくもう一つ大きな要素があります。それは組織として活動しているので、社員を巻き込みながら行っていく必要があるということです。一般には「コミュニケーション」と言われる活動も必要なのです。まとめると、経営活動とは次のようにいえると思います。

経営は、企業組織が問題解決とコミュニケーションを行うこと

ついでに経営のなかで重要なマーケティング活動についても触れておきます。一般には「マーケティングとは売れる仕組み作り」だと言われています。しかしよくよく考えると、売っているものの正体は実は全て「顧客の問題解決手段」なのです。例をあげると大工道具のドリルを買うお客がいたとして、そのお客は穴を開けるための問題解決手段を買っているわけです。(これは有名なマーケティングの書籍に出てくる話です)

とすると経営とは「『顧客の求める問題解決手段』を売れる仕組みを作ること」とも言えます。企業の経営では二重の意味で「問題解決」が肝となっているのです。(ちなみに経営戦略=問題解決をする対象(5W1H)を絞って実行することです)

経営とは問題解決とコミュニケーションから成り立っています。ゆえに上手な経営をするとしたら、この二つをうまくやることが条件となります。さてここで問題解決のほうを掘り下げてみます。フレームワークはこれと非常に関係が深いので。この問題解決をうまくやるにはどうしたらよいかということが次の問題となります。

経営において問題解決をうまくやるには?

問題解決のうまいやり方を知りたいと思いますよね。実はその方法は特別な秘伝のようなものではありません。一流の経営者やコンサルタントの中には、自然と体得している方も結構います。ですが自然とできてしまう人は圧倒的に少ないのも事実です。

 

問題解決のここ30年ほど、この問題解決のノウハウが経営コンサルタント会社の現役社員やOBが徐々に書籍やセミナーで明かすようになってきています。そのおかげで、自然と体得できなかった普通の人でも問題解決の手法を学べる時代となっています。

問題解決手法を解説した本は大量にありますが、最も大事なのは問題解決を進めるための考える段取りです。解決したい問題があったときどのようにアプローチしたらよいか、ステップとして示したものがいろいろな人から提案されています。典型的なものとして以下のようなものがあります。

問題解決の典型例

  1. テーマ設定
  2. 状況把握
  3. 課題設定
  4. 原因探索
  5. 解決策立案
  6. 実行

問題解決のステップに絶対的なものはありません。同じ人でも問題のテーマによっては増やしたり減らしたりします。ここまで来てやっとフレームワークが登場します。

経営のフレームワークは、この1から6までのステップで必要があれば使うという感じです。必要がなければ使いません。例を挙げます。会社の業績が不振になったが原因が不明だ、どうしたらいい?といった場合の問題解決をする場合、使う可能性のあるフレームワークは以下のようになります。

ステップ 内容 使えるフレームワーク
(1)テーマ決定
(2)状況把握

問題となる事実の把握

SWOT、PLC、3C、4P、ビジネスシステム、バリューチェーン、PPM 
(3)課題設定

あるべき姿を描く
解決すべき課題を決める
目標を具体化する

SMART
(4)原因探索 因果関係を明らかにする
検証する
WHYツリー、5F、バリューチェーン
(5)解決策立案 解決策をリストアップ クロスSWOT、3C、4P
(6)実行 計画・行動・評価・改善 PDCA、KPI、KGI

なお、使えるフレームワークは、何度もいいますが、使ってもいいということで絶対というわけでもありません。また、同じフレームワークでも使うステップが異なれば、意味合いや使い方も微妙に変わってきます。

ちなみに、問題解決の内容によっては、プロのコンサルタントでさえ、フレームワークを使わないことも多々あります。むしろ、あらゆる経営の課題が既存のフレームワークでカバーできるとは思わないほうが賢明だと思います。

結論

経営のフレームワークは、問題解決のための道具です。それ以上でもそれ以下でもありません。経営活動をうまく遂行したいと思うならば、問題解決のスキルを総合的に高めていくことが大事なのです。

一流の料理人になりたければ料理に関する、素材、調味料、レシピ、栄養学などを学び、包丁に限らずいろいろな道具の使い方も習得します。その総合的な結果として美味しい料理ができあがるのです。

ビジネスの世界で、成果をあげたかったら、同様にビジネスに必要な知識を得ると同時に、問題解決スキルを磨きなかで道具としてのフレームワークの使い方を覚えていくということが必要なのです。

ですので例えば「3C分析」というフレームワークを知ったら、どのような問題解決の場面で使うべきかを十分に検討してから使いましょう。そうでなければ単なる時間の無駄になってしまいます。

こうしたことを裏付けるものとして、国内のビジネススクールでも「問題解決」についての講座を開講するところも出てきています。

コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法 P.27