読者・視聴者への深い配慮と構成力です。書籍なら書き方です。
料理で言うと、素材も大事ですが、やはり調理と盛り付け、配膳のタイミングも考え抜かれたものだということなんです。読めば読むほど痛感しました。 以上が池上氏の「わかりやすさ」の肝だと気づいたんですが、さすがにこれだけで「ブログ記事」に応用するにはしんどいですね。 そこで私なりにブログ記事の書き方として参考にしていただけるよう、ポイントを6つにまとめてみました。私ごときが偉大な池上彰氏の文章を分析し解説するのは、おこがましいのですが、そこはご容赦いただきたいと思います。 ではさっそく解説を始めましょう!池上彰氏の偉大なる実績
まずは池上氏をあまり知らない方のために簡単に紹介しましょう。一言で言うと彼はNHK出身のフリージャーナリストです。 さて業績をみてみましょう。池上彰氏の著作物をAmazonで検索してみました、3月20日現在、共著なども含め513点がヒットしました。凄い数ですね。テレビの出演数も多いのも、ご存知でしょう。 池上氏のカバーしているジャンルは、「時事ニュース」を筆頭に「国際情勢」「近現代史」、さらに「一般教養」「コミュニケーション論」「メディア論」などがあります。さらによくメディアで取り上げられる論点については何でもござれといった感じですね。ちなみに一番得意なのは「近現代史」の絡んだものだそうです。これだけのアウトプットを可能にしているのが膨大なインプット、取材と読書です。日々の取材の他に全国紙と地方紙を読み、その上で年間300冊以上の読書をされてます。(それを可能にする秘密は以下の本に書いてありますのでよければぜひどうぞ)
『僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』
著者:池上 彰 | 出版日:2016-12-16
出版社:東洋経済新報社 | ASIN:B01N6EGMF9
~池上彰氏の「わかりやすさ」の秘密~ 冒頭でのツカミを半端なく面白いものにしている
まず最初のポイントは、池上氏のテレビ番組や文章の導入部分にかける姿勢から学びたいと思います。 池上氏の発信するコンテンツは、何と言っても冒頭部分の工夫が凄いです。最初の部分で読者を心を捉えてしまうんですね。以下はそれについて池上氏自身が語ったものです(インタビューに回答される形で話されてます)。やはり、分かりやすく説明するためには、適切な具体例が必要です。先に抽象論を話すと分かりにくくなる場合は、まず具体的な例から話した方がいいでしょう。大学の授業はいきなり抽象論・一般論から始まることが多く、そこで眠くなってしまうといったことになりがちです。先に具体例を出してから、「その具体例から言えることはこういうことです」と一般論を説明すれば、分かってもらいやすくなります。 (中略) 放送で言うところの“つかみ”です。視聴者は「面白くない」と思ったらすぐにチャンネルを替えてしまいますから、最初に「面白そうだな」と思ってもらわなければなりません。落語で言えば“枕”ですよね。枕を笑って聞いているうちに、いつの間にか本編に引き込まれていくという形です。 セールスも同じことでしょう。最初に興味を引く話ができなければ、「時間のムダだから帰ってよ」と話を聞いてもらえません。 ある高級外車のトップ営業マンの手記によると、お客様に対して最初に話すのは、その車のセールスポイントではなく、「自動車がある暮らしの素晴らしさ」なのだそうです。例えば「これから紅葉のシーズンになりますね。○○の紅葉はきれいですよね。○○の山道をドライブすると最高ですよ」といった車のある暮らしの楽しさについて語った方が、お客様は車が欲しくなるというのです。特に、後半でセールストークにまで触れておられます、貴重な発言ですね! 興味を引く適切な具体例を冒頭に持ってくるという点、これはブログ記事にも活かせますね。 池上氏の凄いところは、現地で取材しないと拾えない生々しいネタを例として出してるところです。他のキャスターがなどが真似できない点ですね。 記事を書く場合、ネット上だけでなく実際に書き手が五感で体験したこと、しかも面白がることを書くということがポイントとなるということですね。はい、一つ目のポイントでした。
冒頭部分に書くべきこと
?具体的で、体験に基づくこと
?読者が面白く感じること
知りたいことは全て答え、疑問を残さない
では2番めのポイントです。池上氏の話や文章で優れた点として、視聴者・読者の頭の中に疑問を残さないということがあります。もつろんこれは、どんな話でも基本なんですが、池上氏の徹底度合いが違うということです。 これは、あらかじめ疑問に感じるところを徹底的に予想し、その回答を用意しているからできることですよね。 ゆえに池上氏と他のニュースキャスターでは、取り上げる切り口の数が全く違うように思います(持っている時間の制限もあると思いますが・・・)。私の記憶ですとだいたいいつもこんな感じではないでしょうか? 比較表を作ってみました。赤字部分が池上氏のみが語られる内容です。(私の印象です)一般的なニュースの説明 | 池上彰氏によるニュースの説明 |
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読者の知りたいことを漏らさずリサーチして全て解答を書く
さらに、その説明の順番も実は大切です。視聴者が本当は聞きたいけど聞けないことってありますよね? 特に宗教が関係した事件などです。一つ言葉を間違えば大問題になりかねないため、どの話し手も取り上げ方がナーバスで腫れ物にさわるよう感じです。
ですが池上氏は最初からその聞きづらいところにズバリと切り込みます。インタビューなら、そこから質問をします。これが視聴者を惹き付けるところです。
人って気になることがあると、それが片付くまで、何を聞いても頭に入って来ませんよね? それを逆手に取れば先に一番しりたいことを教えてあげると、後はゆっくり聞いてくれるのだと思います。
読者が本当に知りたいこと、引っかかっていることは先出しする
視聴者(読者)の頭の中を整理してあげる!
これも私が感じる「池上マジック」です。何かの事件、難しい概念について池上さんが解説すると、それまで自分の頭にあったガラクタ状態だった知識が不思議と整理される気がするんですよね。今回調べてみてわかりました。そのあたりも池上氏は意識されていたんです。 それがわかる文章を引用しますね。── 池上さんはNHKの記者時代から「分かりやすく伝えること」に力を注ぎ、「分かりやすさとは何か」を考え続けてきたそうですね。そもそも「分かりやすい」とはどういうことなのでしょうか。 何かについて説明を受けたりして、「あぁ、そういうことだったのか!」と思わずひざを打つようなこと。これが「分かる」ということですよね。自分の持っていたバラバラな知識が、その説明を聞くことで一つにつながったとき、初めて「分かった!」となるのです。 つまり、断片的な知識を、整合性のある一つのものとして結び付けてくれるような論理や理屈を提示されたときに、人は「分かりやすい」と感じるのです。さすが池上氏ですね。 何か大事件が起これば、視聴者には断片情報が多方面から入ってきます。特に日本から離れたアフリカ、中東地域での紛争なんかそうですよね。私達の頭の中には、いわば「散らかった机の上」状態になりがちです。でも、しょうがないです。 ですが池上氏はそうした状況を理解していて、そうしたバラけた情報が頭の中で整理できるよう、理解のポイントを提示してくれます。例えば時系列で整理するとか、あやふやな過去の事件を説明し直すとかですね。 すると、点と点の集まりでしかなかった事件の断片情報が、つながった線になってくるんです。 しかも彼は一流のストーリーテラーなので、一貫したストーリーとして語れるんです。だから全てが腑に落ちる感じになるんです。オー凄い。 ブログに活かすポイントをまとめます。
読者が既に頭の中にある知識を予想し、それらの繋がりを理解できるようにしてあげること
伝えるべき情報を減らさず、比喩で説明する
人は、複雑な物事を説明するとき、相手の理解度に応じて伝える情報自体を調整します。特に難解になればなるほど減らそうとします。 相手が理解できなさそうなとき、私は極端に情報を省いてしまったりしてました。私はそれがうまい説明だと勘違いしていました。でも池上氏は違います! 池上氏は大事な情報は削りません。わかりやすさを大事にされてますが、相手が理解できる限り、ぎりぎりのところまで省かず情報を伝える努力を忘れないのです。 週刊こどもニュース時代も、小学5年生が理解できるレベルの抽象的概念は伝えるようにされていたようです。 例をあげましょう。「三権分立」についての池上氏の説明です。三つの権力が、それぞれを監視する。いわばジャンケンのグー・チョキ・パーのような関係ですね。でも一番えらいのは「最高機関」である国会です。 出典 『政治のことよくわからないまま社会人になった人へ―ひとめでわかる図解入り』内閣、司法、国会の関係を見事にわかりやすく伝えてますね。三権の相互監視をジャンケンで喩えるあたり凄すぎますね。しかも国会の地位も省略せずきちんと伝えてます。ちなみに引用した本は、小学生向けでなく社会人向けの本です。よく文章は中学生にもわかるように書けって言われてきましたが、こういうことなんですね!! はい、ではここでのポイントです。
安易に情報を省かず、わかるように伝える努力をせよ!
ちょっとした雑学ネタを提供
これは、池上氏の「サービス精神」についてのお話です。 顧客満足度(CS)という言葉がありますよね。実際に得られたサービスが、当初の期待以上だったとき、満足度が高いってことになるんですが、池上氏はそれも考慮しているように私は思ってます。 普通は一通り説明をして、100%理解してもらったらそれでOKですね? ところが池上氏は、さらにオマケで雑学的なネタも話すことが多いんです。それがあると、ちょっと自慢したくなるようなネタをよく彼は最後に出すんですね。すると視聴者・読者は「学べた感」がアップするんです。 以下は「日本の選挙制度」の説明文章ですが、オマケとして「くじ引き」のことを書かれてます。かく言う私も、ホントはこの知識を披露したくて書いてます ^ ^ 。候補者の得票数が同数だったら、どうするのでしょうか? 衆議院選挙や参議院選挙ではまずないでしょうが、地方の市町村議会選挙では時々あることです。 こういうときは、「くじびき」で決めます。 出典 『政治のことよくわからないまま社会人になった人へ―ひとめでわかる図解入り』なんと民主政治の根幹を支える選挙の最終決定は「くじびき」なんですね!? バラエティ番組なら、間違いなくプロデューサーが喜びますね。だれもが「へぇー」となりますから。ではまとめで5番目のポイントです。
人に伝えたくなるちょっとした知識も提供すると、読者のお得感が増す
正義感に基づく報道への真摯さ
池上氏の人気を支える一つが、選挙速報番組等での鋭い質問です。”池上無双”と言われているそうです。でも周りを気にせずただ大きな声で、ストレートに問いただすだけなら他にもいますね。いわゆる論客といわれている人たちで、朝まで討論するたぐいの番組によく登場してます。 でも彼らの信頼度はどうなのかなと思います。正直、時事問題をまじめに勉強しようと思ったとき、彼らの本を買って学ぼうとは思えません。私なら池上氏の本を買います。池上氏の真実を求める姿勢、真摯さを信頼しているからです。 また膨大なインプットとアウトプットから出てくる実績もありますし。 また池上氏は一切自分の意見や主張は語りませんが、取材時のスタンスを見ていると「庶民側の視点」だなと感じることが多々あります。報道に対する情熱は、彼なりの正義感からのものだと私は感じますし、たぶん多くの視聴者・読者も同じように思っているのではないでしょうか? 大事ですよね。 最後のポイントです。仕事に対する真摯な姿勢がベースにあってこそメッセージは受け入れられる