中小企業のM&A|事業承継の場合の注意点について

こんにちは。今回は中小企業の事業承継を目的としたM&Aの注意点について解説します。今、日本の経済発展を支えてきた中小企業の「後継者不足」が大きな問題となっています。

多くの中小企業は第二次世界大戦後の経済復興を担いつつ発展してきたわけですが、今や創業者、及び2代目の経営者の老齢化が急速に進み、いかに後継者へバトンタッチしていくかが社会的な課題になっています。

会社を発展させてきた彼らと同等の経営力や胆力、責任感を持った後継者が育っていれば問題はないのですが簡単なことではありません。

子供がいても後継者となることを断ることも多いようです。また社員の中から選ぼうとしても適材が育っていない場合も多いようです。

その結果、中小企業の「後継未定」は127万社ほどあり、日本の企業の約3分の一が廃業の危機にあるという話もあります。そうした中で注目されるのが、全くの他人に承継をしてもらうM&Aが脚光を浴びています。では解説を始めましょう。

中小企業 M&A用語のミニ解説

M&Aを話題にするとき、よく出てくるキーワードがあります。ちょっと說明しておきますね。わかっている方は飛ばして結構です。

事業の「承継」とは?

この熟語を見て「継承」の間違いではないかと思った方もいることでしょう。私もそうでした! 実は経営用語としては、事業を受け継ぐことを事業”承継”というのです。これを機に覚えましょう(笑)

M&A

M&Aは、英語の「Mergers and Acquisitions」の略です。日本語では、企業または一部事業の「合併と買収」のことを指します。

譲受企業、譲渡企業

買い手側の企業のことを「譲受(じょうじゅ)企業」、売り手側の企業は「譲渡(じょうと)企業」というそうです。

デューディリジェンス(Due diligence)

英語のDueは義務、Diligenceは努力という意味です。デューデリジェンスは、M&Aなどを行う際に実施する企業価値についての調査のことです。財務、マーケティング、ビジネスモデル、シナジーやアナジー、バリューチェーン、、顧客・市場の動向、人事、IT、法務、税務、知的財産など必要なすべてのことを調査し、その価値やリスクを査定します。

Cross-border M&A

国際間に渡る取引のこと。譲渡会社または譲受会社のいずれか一方が外国企業であるM&A取引のことを指します。

中小企業M&Aのプロセス

基本は以下のようなプロセスで進んでいきます。中小企業でも大企業でも変わりません。

買い手企業側
  1. 自社の分析・評価
  2. M&A戦略の策定
  3. 売り手候補の調査
  4. 交渉
  5. 買収監査
  6. 契約作業
売り手企業側
  1. 自社の分析・評価
  2. M&A戦略の策定
  3. 買い手候補の調査
  4. 交渉
  5. 買収監査
  6. 契約作業

中小企業M&Aの成功基準

M&Aは、多くの人が関わる大作業です。いわば2つの企業に関わる多数の人間が影響を受けることになります。その成功の物差しは何なのか、特に中小企業ということを念頭に置いて考えてみます。

売り手側企業からみたM&Aの成功基準

  1. 社員の雇用と待遇(人事の公平性)が守れるか
  2. 統合後、市場での地位は保てるか
  3. 金融機関債務の処理、財務基盤の安定化
  4. 株の売却益(創業者への報酬)
  5. 取引先(仕入先)との円滑な関係は保てるか

買い手側企業からみたM&Aの成功基準

シナジーが多く、アナジーが少ないことです。経営者が望むのは単なる足し算ではなく、ブラスアルファの何かが得られることです。

シナジーとアナジーについては以下のページをご覧ください。

シナジー効果、M&Aでの成功企業5社の具体例でわかりやすく解説!

中小企業 M&Aの専門家によるサポート

ここまで說明しましたように、M&Aを実際に進めるには、まずは相手企業(譲受/譲渡)を見つけること、そして見つけた後はマネジメント、マーケティング、人事、労務、税務、法律などの全般について調査と計画を、スピードと正確さを持ちつつ実行しなければなりません。

こうしたことは、未経験者のみで進めるには困難が伴います。そのため現実的には専門家の助言をもらいながら進めるのが一般的です。銀行、税務会計、法律家などが担う場合もありますが、こうしたことを専業としている企業もあります。

中小企業のM&Aをサポートする専門家を選ぶ注意点

M&Aについて、実際に企業サイドが最初に相談先として考えるのは顧問の税理士、取引金融機関、友人・知人などが多いようです。ですが検討が本格化する場合は専門家を頼ることもあるでしょう。M&Aの専門家を探す際のポイントを書いておきましょう。

マッチングの能力

なんといっても相手企業があってのことです。譲渡/譲受企業が見つからなければお話になりません。まずはこのマッチング能力が重要です。当事者である企業が求める買い手/売り手企業の情報をどれだけ持っているかがまずは勝負です。また業種による得意・不得意もありますので注意してください。はっきりと特定業種のみに絞っている専門会社もあります。

料金体系

報酬の支払い形態は大きく分けて2つです。M&Aが成立した場合に費用が発生するタイプと、成立の有無に関わらず費用が発生するタイプの2つがあります。ちなみにM&Aが決定にまで至る確率はそれほど高くないことは知っておくべきだと思います。

成立の有無に関わらずに支払う場合、内訳は以下のようなものが多く見受けられます。

 着手金:M&Aが成立しなくても戻ってこない
 リテーナーフィー:契約期間中毎月払う
 中間金:M&Aの相手と基本契約を締結したときに払う

なお、成功報酬のタイプでは、株式譲渡価格や有利子負債を総合して算出することが多いようです。

企業評価能力

いわゆるデューディリジェンスの能力はもちろん大事ですが、前段階の企業選定時にも必要な能力です。

特化分野

M&Aを支援している会社の中には、一定の何かに特化した形でM&Aを支援しているところもあります。業界、地域(国内/海外)、取扱規模などで一定の対象に絞って支援する形です。もしもこうしたことが有利に働くようならば検討対象にしてもよいでしょう。

担当者の人柄や経験、見識

どの世界でも、これは重要です。特に人柄や見識は非常に重要です。

M&A成立後のPMIに対する配慮

M&Aは、それ自体も大変な作業ですが、最も大変なのは、成立後の業務の執行です。2つの会社もしくは事業が一緒になったあと、想定した成果が出て初めてその価値は認められるのです。ビジネスはボランティアではありません。二つの会社が一緒になることで以前よりも経営の成果が上がらなければ意味がないともいえます。

M&Aの成立後、シナジーを実現し、企業価値を向上させるための統合プロセス全体を意味する言葉としてPMI(Post Merger Integration)という経営用語が使われるようになってきています。対象企業を選定する段階から、このようなことを見据えておくことが肝要だといえます。私も実際にM&Aに携わった方からこのことの重要さを何回も聴きました。

おすすめの本

おわりに

今回は、中小企業のM&Aについて、その成功基準、サポートする専門家を選ぶ際の注意点などについて書いてみました。皆様の参考になれば幸いです。