KPIとは
KPIというのは計画における目標数値のことです「Key Performance Indicator(キー・パフォーマンス・インジゲーター)」を意味しています。企業においては目標数字を追いかけるのは、あたりまえのことです。 なぜ、単なる目標数値に対して”KPI”などという名称を付けることになったのでしょうか? その理由は、計画をたてるときの目標数値自体の取捨選択と設定こそが組織の業績(パフォーマンス)に影響することがわかってきたからです。 KPIの提唱者キャプランとノートンは、これを飛行機の操縦に例えています。パイロットは目的地に着くまで、たくさんの計器のメーターを見てチェックしながら飛びます。どのタイミングで、どの計器を見るべきか、それがどのような数値ならOKなのかを確認しながら飛んでいるわけです。 これは「パイロットは、いつ、どこで、どの計器が、どんな数値を示しているならOKなのか」を完璧に理解し実行しているから目的地に着けるのです。 これと同じでいわば会社や病院を「操縦」するときに見続けるメーターがKPIなのです。どんな数字を目指すとその病院の最大のパフォーマンスが出せるのかが病院の「KPI」だといえましょう。KPIを設定するメリット
KPIを使うことで、当然メリットが生まれます。一言で言うと「組織の活動の過程(プロセス)を上手に管理できるようになる」ことが最大のメリットです。- 途中の経過をチェックできる。毎年の決算の結果を待たなくても良い。
- 数字で日々の行動状況をチェックできる。ただ言葉で「頑張って」「限界を突破」とかよりも実用的。
- 組織のメンバー全員で互いの行動や組織の動きをチェックできる。
- メンバーの意思統一が図りやすくなる
- メンバーに対する評価を公平に行えるようになる。
KPIの生まれた背景
KPIは、1992年経営ツール「バランスト・スコアカード」が大元です。提唱したのはキャプラン(ハーバード大学教授)と、ノートン(コンサルティング会社社長)。「スコアカード」は成績表ですから、直訳すると「バランスのよい企業の成績表」ということです。 このツールはそれまであった似たような業績評価のシステムとは違い、大変よくできていたので、あっという間に世界中で受け入れられるようになりました。特に「見える化」への配慮が受けたのだと思います。 そしてそのなかで、中核的な概念として一般的な「業績指標」、そして特に重要なものとして「重要業績指標(=KPI)」が説明されています。ちなみに彼らは経営を見るには、4つの分野についてKPIを設定しましょうといっています。
・学習と成長の視点(従業員のスキルアップ)
・顧客の視点(お客様の感じるロイヤリティー、品質)
・社内ビジネス・プロセスの視点(業務内容の質)
・財務的視点(財務の視点、例えば使用総資本利益率など)
本来、KPIはこうしたもの(4つの視点に立った評価指標)だということは、ちょっと頭の片すみにいれておいてください。ちなみに以下がキャプラン氏とノートン氏の原典です。
KGIについて
KPIはKGIと言う用語といっしょに使われることが最近多いです。KGIとは「Key Goal Indicator(キーゴールインジゲーター)」の頭文字を取った略語で、達成できたかどうかを計測する最終目標(ゴール)の数字です。 KGIとKPIが両方とも出てくる場面があります。その場合は以下のような意味合いを持ちます。KPI=中間目標 KGI=最終目標
最近は、こちらの使い方が多くなっています。確かに分けたほうがいい場合もありますよね。 例えば、最終目標(KGI)を「医業収益 10億円」と設定したとします。すると、中間目標(KPI)は、その医業収益を分解して設定します。例えば医業収益を3つに分けて設定すればKPIは以下のようになります。- KGI → 医業収益 10億円
- KPI その1→ 入院診療収益(室料差額含む) 2億円
- KPI その2→ 外来診療収益 2億円
- KPI その3→ 受託検査・施設利用収益、その他 1億円
病院のKPI、KGI の例について
KPIの本家はバランス・スコアカードだというのは既に説明したとおりです。ここでは病院に用いられるバランス・スコアカードの成果尺度を掲げておきます。以下の4分野においてKGI、KPIを設定し、定期的にモニターをしながら病院の経営全体を把握しましょう。病院について「財務」の観点から用いられるKPI/KGIの例
病院経営の成績表ともいえるのが財務的な尺度です。- 医業収益
- 診療単価
- キャッシュフローマージン
- 病床利用率
- 平均在院日数
- 病床回転率
- 医業収支比率
- 医師一人あたり医業収益(1年間)
- 人件費率
- 科別、部門別の原価率/医業収益(率)
- 疾病別の医業収益(率)
- 医薬品のデッドストック率
病院について「顧客」の観点から用いられるKPI/KGIの例
利用者(患者)さんの視点で見たKPIは以下のような例が考えられます。- 従業員満足度
- 利用者(患者)の総合的な満足度
- 利用者(患者)家族の満足度
- 地域開業医からの満足度
- 医師治療についての満足度
- 看護師のケアに関する満足度
- 事務職員対応の満足度
- 紹介率、件数
- 就職、転職希望者数
- ボランティア受け入れ数
- 実習生受入数
- 新患者数、増加率
- 地域の市場シェア
- ER受入数/断り数
- 診療待ち時間
- 会計の待ち時間
- 利用者のQOL向上度
- クレーム件数
- 服薬、栄養指導の件数
- セカンドオピニオンの実施回数
- 利用者リピート率(回数)
病院について「業務プロセス」の観点から用いられるKPI/KGIの例
業務のプロセスはKPIを利用する上でまさに真骨頂といえます。代表的な例を掲げておきます。- 職員の時間外勤務比率
- 医師の時間外勤務比率
- 看護師の時間外勤務比率
- コメディカルの時間外勤務比率
- アクシデント件数
- 褥瘡発生率
- ヒヤリハット件数
- 院内感染発生件数
- 合併症発生率
- 手術室の稼働時間
- 離職率
- 労働分配率
病院について「成長と学習」の観点から用いられるKPI/KGIの例
従業員のスキルアップの状況を示すKPI/KGIです。- 教育研修費
- 院内/外部の研修実施回数、のべ参加人数
- 地域に向けた勉強会の実施
- 学会参加のべ人数
- 学会発表、論文発表数
- 専門医数
- 認定看護師数
- 接遇研修費
- 提案件数(件数)
- 資格の取得
- 離職率
KPI/KGIの勉強に役立つ本
入門書↓
医療分野↓
『医療経営のバランスト・スコアカード―ヘルスケアの質の向上と戦略的病院経営ツール』
著者:高橋 淑郎 | 出版日:2004-11-01
出版社:生産性出版 | ASIN:482011798X
基本的にはこの一冊で十分。SWOT分析を含め看護師の方に必要な経営学のイメージを掴むのにちょうどいい本です。MBAを持ってる看護師さんが、経営学の本質を踏まえた上で書かれています。
基本的にはこの一冊で十分。SWOT分析を含め看護師の方に必要な経営学のイメージを掴むのにちょうどいい本です。MBAを持ってる看護師さんが、経営学の本質を踏まえた上で書かれています。