バリュープロポジション(キャンバス)の意味と例を図解|無料テンプレート




こちらでは「バリュープロポジション」の意味について例を使ってわかりやすく説明しています。また標準的なバリュープロポジション・キャンバスの例を示した上で、無料テンプレート(パワーポイント版)を用意しています。すぐにプレゼンシートが作れます!

ビジネスの本質は「価値」を提供し対価を得ることです。その価値をどのように考え、作り、提供するかで全てが決まります。「バリュー・プロポジション」とは今までマーケティングの世界で使われてきたこの「価値」という言葉の進化形だと思ってください。

「価値」ということばが手垢にまみれてしまったので、「マーケティングで目指すべき本当の価値とはこうなんだ」ということが言いたくて生まれた言葉なんです。ではなぜ「バリュー・プロポジション」といった用語を使うようになったのか? 何が違うのか? さっそく説明に入りましょう!

バリュープロポジションとは

バリュープロポジション(英語:Value Proposition)とは何でしょうか?

バリュー(英語:Value) → 「価値」
プロポジション(英語:Propsition) → 「提案」「主張」

といった意味です。直訳すると「提供される価値」または「価値の提供」です。経営書で日本語に訳して使用されるときは「提供価値」「価値提案」「顧客価値」などと訳され使われています。でもピンときませんね。「バリュー(価値)」と何が違うんでしょうか?

では使われるようになった背景を説明して、そのあと詳しい説明をしますね。

「バリュープロポジション」が使われるようになった背景

バリュー(価値)ではなくバリュープロポジションが使われるようになったのは主に二つの背景があります。

①企業と顧客の価値の不一致

企業は、顧客に向けて「価値」を日々作り提案しているわけですが、実はそれが企業の勝手な思い込みだったりすることがあるんです。

例えば、電気製品です。一生使わない余分な機能がテレビやスマートホンについてますよね。そのためにユーザーはある意味、不要にその分高いお金を払いつつ、操作にも苦労させられるわけです。これって不幸ですよね。

このように顧客の求める価値と、企業の想定する価値が一致していないことが多く見受けられるようになってます。これはお互いによくないのでここできちんと、顧客が本当に求めている価値を提供すべきであるという議論が起こってます。これが「バリュープロポジション」という言葉を生み出した背景の一つです。

②その企業が価値を提供する理由や必然性

もう一つは、今や商品があふれる時代になってきており、商品選択がしづらくなったということが背景にあります。ここまでモノが豊富になると似たようなものを作る会社は多くはいらないのです。

カップラーメンもシャンプーもデジカメも、商品の全ての仕様や機能をチェックして買うことは、もはや選択肢と情報が多すぎて一般消費者にはできません。

ですから、選択の苦労を少しでも減らしたいということは誰もが思ってます。

ですがそれとは別に、企業自体の商品やサービスに対する姿勢について、消費者はうるさくなっています。日本を代表する自動車、電機、食品の名門企業が、安全性を軽視して倒産の憂き目に合うことは珍しくありません。

企業の本気度が問われているということです。反対に小さな企業でも真摯にものつくりに励んでいれば人もお金も集まるのです。消費者がそこまで見て買うようになったということですね。

まとめると、選択を楽にする意味でも、企業のスタンスを確認する意味でも、「なぜその会社は、その商品を提供しているのか」が問われるようになってきているのです。

顧客はその企業から購入すべき理由、必然性を知りたい、確認しておきたい。これが背景の二つ目です。

導かれる定義は?

企業は、以上のようなことを加味したうえで、商品やサービスに込める「価値」を考えるべき時代に入ったんです。こうした今までにないことをふくめた概念をさがしたところ「バリュープロポジション」がハマったということだと思います。

以上がバリュープロポジションという言葉の生まれた背景です。ではここで私の定義を書きますね。

「バリュープロポジション」とは

商品・サービスの持つ、顧客が認める価値の組合せ

顧客のことを考え抜いた上での提供される価値、自社が提供する使命を感じている提供される価値、それが「バリュープロポジション」なのです。そしてそこには他との違いもかなり重視されるという前提が含まれます。

例をあげます。最近すっかり定着したコンビニ・コーヒーのバリュープロポジションは、次のようになります。

  • 安い
  • 早い
  • 挽きたてのうまさ
  • 持ち帰れる
  • 入手の容易さ(コンビニはどこでもある)

バリュープロポジションの条件

では実際に「この商品のバリュープロポジションはこれです」と言うためには何が必要でしょうか。細かく言えばいろいろありますが、集約すると以下の3つとなります。

①顧客が理解できる
そもそも顧客側に立つわけですから、内容が理解できるよう、表現自体もわかりやすくないとだめです。

②顧客のニーズを満たしている
ニーズを満たしていることはもちろんです。さらにそれを超えるほどのものがあればなお一層評価が高まります。

③提供する理由が納得できる(技術力でも想いでも可)
なぜその企業が提供するのか、可能なのかを明確にします。それは「磨き上げた技術」でも、「創業者の人生を通じての想い」でもかまいません。

①②は必須で、③についてはできれば入れておいたほうがよいといったところです。以上がバリュープロポジションの成立する条件となります。

バリュープロポジションを作る手順

バリュープロポジションを実際に構築するには二つの方法があります。

その1 3C分析を流用する

バリュープロポジションを作るには自社商品・サービスについて、まずはしっかりと分析しておくことです。これには、従来のマーケティングで使われている3C分析を使って行えばOKです。

3C分析とは商品・サービスの「顧客のニーズ: Customer」、「競合: Competitor」、「自社: Company」に関する情報を整理したものでした。それらを若干ニュアンスを変えて描けば、とてもわかりやすい図が書けます。

「顧客のニーズ: Customer」 ⇒ 「顧客のニーズ」に変更
「競合: Competitor」 ⇒ 「他社の提供できる価値」に変更
「自社: Company」 ⇒ 「自社の提供できる価値」に変更

バリュープロポジションを作るのに必要なのは、「顧客のニーズ」と「自社で提供できる価値」の重なりでかつ「他者の提供できないもの」が理想です。上の図では、黄色く塗った部分がそれです。

その2 バリュープロポジション・キャンバスを使う

これはアレックス・オスターワルダーという人が提唱している方法です。顧客のニーズと企業の提供する価値を一覧できる図にします。前者の図を「顧客プロフィール」、後者の図を「バリューマップ」といいます。二つの図の中身をうまく対照させながら図を埋めていくことでバリュープロポジションを設計します。

一つ目の図 顧客ニーズを「顧客プロフィール」に書く

  1. 顧客の課題
    顧客がやり遂げたいと思っていること。解決したい問題。
  2. ペイン
    強い痛みを感じている悩み
  3. ゲイン
    顧客が望む結果

二つ目の図 企業の提供する価値を「バリューマップ」に書く

  1. 製品とサービス
    提供する商品・サービスの中身
  2. ペインリリーバー
    顧客のペインを取り除くための、具体的な解決策
  3. ゲインクリエーター
    顧客のゲインを満たす具体的な方策

バリュープロポジション・キャンバスの例

ここでは、ダイエット商品の企画ということで、例を考えてみました。自分の姿勢を常によくしようと意識するだけで筋肉が使われるので痩せられるという画期的なダイエット法を開発、教本とコンサルティングを売るというものです。左右にニーズと価値が対象的に配置されてます。アイデアを考えるのには使い勝手がいいですよ。

上記の文章及び図表は、以下の文献を参考にしています。

バリュープロポジションの例

私がバリュープロポジションの提供例としてあげたい筆頭はLCCのピーチ(Peach Aviation 株式会社)です。ご覧のとおり機体が全てピンク色。航空会社らしからぬ名前とイメージカラー。

実は全日空のグループ会社です。親会社ANAの躍進は有名ですが、その影に隠れてそれほど話題になってないのですが経営センスと実績はピカ一です。

出典:Travel West

ピーチについてざっと説明します。

  • 気軽に乗れる「空飛ぶ電車」がコンセプト
  • これまで飛行機を頻繁に利用しなかった人が対象、ビジネスマンは対象にせず、20~30代の女性がターゲット
  • 機体カラーは女性向けに「フューシャピンク」。座席はパープル。制服は「艶やかさ」がコンセプト
  • 実際の利用者の男女比率は4対6で、女性が多い。4割の男性のうち2割は子供とシニア
  • 自動チェックイン機で、5秒ほどでチェックイン(電車と同じ)
  • 提供座席数ベースで国内4位の実績(全日空、日本航空、スカイマークの次)
  • 機内の飲食物は有料、映画や音楽などのエンターテインメントは無し
  • 定時運行率(離発着の正確性)大手と同等以上
  • 平均搭乗率は日本の航空会社の中ではトップ(国内線91.3%、国際線84.1%)

実にユニークなコンセプトですが、同時に素晴らしい実績も出しているんです。特におもしろいのは、若い女性のあらたな余暇のスタイルを生み出したことです。ソウルへ日帰り旅行をする女性の顧客が多いそうですが、こうなるとは想像もできませんでした。

ピーチは「ヒト・モノ・コトの交流を深めるアジアの架け橋となり、人間愛を育むエアラインとなる」という経営理念を掲げており、単なる格安航空ではないのです。

より多くの人々が、気軽に様々な場所へ出掛けることができる。そして、お互いを知り、文化を知り、考えを知ることで、感動が共有され、理解が深まっていく。交流・感動・理解により育まれる、国籍や文化を超えた人間愛。その人間愛をアジア、さらには世界へ広げたい。これこそが私たちPeachの夢です。愛こそすべて。Love & Peach。当社のすべての取り組みの根底には、こうした思いがあります。
出典:井上慎一CEOが語る日本初・本格的LCC「ピーチ」の戦略

これは社長の井上氏が語った言葉です。

私も直接話を聞きましたが、その中で印象に残っていのたが、台湾の女性が沖縄の美容院に通うという話です。台湾から沖縄までのピーチの運賃はとても安い(5,000円程度?)ので、少し余裕があれば腕のよい美容師がいる沖縄まで「国」を越えて来られるそうです。

他にも飲食店などで似たような話があり、国境に関係なくショッピングや文化を目的に人が行き来するようになってきているんです。ピーチが就航したことで日本の各地に落ちる観光客からの収入も相当な額になっているとのこと。

もちろん逆もしかりです。普通のOLが気軽にアジアの近辺に週末に遊びに行く姿が見られるそうです(上に掲載した動画)。

以前は一部のお金持ちしかできなかったことを可能にしたのです。草の根の国際親善ともいえますね。こうした状況を創った井上氏の率いるピーチの社員さんたちを私は尊敬します。

人間愛とかホスピタリティといったことをうたうのは簡単ですが、実際に実現させられたのは知恵と努力があったからこそです。血の滲むようなローコスト化の努力もされてますし。

でも機内食には日本各地の名産品を使い、乗客(日本の内外問わず)の方に少しでも日本の地方の良さを知ってもらう努力もされています。一企業であるのに、ここまで地域の将来のことまで考えられているのかと頭が下がる思いがしました。

顧客のニーズに完璧に応えている上、他の航空会社にはできないことをやっています。なぜピーチが価値を提供するのか、その理由もみごとに経営理念に含まれています。パーフェクトですね!

★ピーチのバリュープロポジション★

日本と近くのアジア地域を安く便利に行き来できる(電車のような)航空網の構築により、20代30代の女性の新しい旅を提供する。

独自性は、ターゲット選定の時点で既に達成されています。空飛ぶ電車も実におもしろいコンセプトです。

井上氏はマーケティングのプロが集まるマーケティング学会で今年のゲスト講演者にも選ばれました。個人的には今年最も活躍したベスト経営者として、USJをV字回復させた森岡毅氏とピーチの井上氏を掲げたいです。

おすすめ本

【補足】ユニークバリュープロポジション、コアバリュープロポジションについて

差別化ポイントを表す用語としてUSP(Unique Sales Propsition)という言葉がありますね。バリュープロポジションは、このUSPと同じ意味で使われることがたまにあります。

また「ユニーク」や「コア」といった言葉を前に付けてユニーク・バリュー・プロポジション、コアバリュープロポジションというときもあります。この場合は完全にUSPと同じ意味となります。

シリコンバレーでリーンスタートアップというのはが流行ってまして、その影響だといわれてます。「まあそんな言い方もあるんだ」ぐらいの認識で十分でしょう。

バリュープロポジション・キャンバス テンプレート無料ダウンロード

バリュープロポジション・キャンバスのテンプレートは、以下から無料でダウンロードできます。(参考用に3C分析のテンプレートも付属)

まとめ

今回は価値に関する話でした。バリュープロポジションは杓子定規にとらえず、顧客に提供するものの核心ぐらいに捉えていれば問題ないと思います。用語の理解は二の次で、実務でいかに顧客を喜ばせたかが勝負ですから。

よく優れた経営者が、ちょっとしたヒントから思いがけないビジネスの発想をしたり、決断をしたりすることがありますよね。これは、想像ですが、周りの人が把握しきれていない、見つけてはいない何らかの顧客が喜ぶ価値を、その経営者は日頃からわかっていて、その価値の実現につながることを見つけたということなのだと思います。

周りの人には、そのロジック(つながり)が見えないので、天才のひらめきみたいに見えるのではないでしょうか。顧客の求める価値さえ掴めば勝ちなので。

たぶんそれが、私たちの求める「バリュープロポジション」なのだと思います。お読みいただきありがとうございました。



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